LONG NOVEL

収穫0 (33/46)

あの時どうして「違う!」って否定しなかったんだろう。

突然にズバリ言われて焦った上に否定する言葉が何も浮かばなかったからなんだけど、相手は小野田坂道じゃなく今泉、「は?なにそれ」ってひと言言い返せば良かっただけなのに。

正直言えばアニオタって事を隠すのも面倒臭いって思うし、自転車部のみんななら私がアニメオタクって事をぶっちゃけ打ち明けてもそれほど驚かないって気もするし・・小野田坂道のおかげで。

それでもそこからクラスメイトに広がり、学校全体に広がらないという保証は全くない。

今思えば高校入学を機に自分をまんまさらけ出してしまっとけばこんな事にはならなかったし、小野田坂道ともすんなり親しくなれたんじゃないかって。

それでも中学生の時に受けた陰口や罵りを思い出すとなかなか踏み出せない。


「わ、私用事あるから!もう行くから!」
「おい、苗字!」


リュックを鷲づかみにバタバタと騒がしくカフェを飛び出してしまった。

今泉はどう思っただろう。
私がアニメオタクって事を小野田坂道に言うだろうか。
もしかしたらクラスの取り巻きの子達に笑い話の様に話すかもしれない・・・

カフェに引き返そうか、気持ちを切り替えて乙女ロードへ遊びに行こうか、迷いに迷った末この日は早々に家へと帰り着いた。


「あれ?名前早かったな」
「あ、青八木先輩こんにちは・・」


純太の家から純太と共に出てきた青八木先輩はいつものように無言で手の平だけ挙げてくれた。


「どうした浮かない顔して・・お目当てのもん無かったのか?あ;」


やべぇ;と言った表情で青八木先輩を気にする純太。



「純太、帰る」
「おう、気を付けてな」


私にちらっと目配せをして、青八木先輩はロードに乗って颯爽と去っていった。


「すまん、つい;でも青八木は他に言いふらしたりなんて」
「純太、今泉にバレちゃった〜;」
「え、何?アニメ好きって事?」
「うん、秋葉原で一緒になって、小野田坂道が来るまでお茶して」
「え?今泉と?」
「うん、そしたら有丸くん好きなんだろ?って。ワンピースのステッカーも気付かれてて」
「マジか;てか名前のオタクがバレた事より、今泉がラブ☆ヒメはともかくワンピースまで知ってたのが驚きだわ、俺」
「驚いて今泉放置して帰って来ちゃった;」
「そりゃまあ仕方ねぇよな」
「だから何も買えなかったし、何も見て来れなかった!」


持ってたリュックを抱き締め、ギリギリと握り拳を作った。
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