LONG NOVEL

スランプの原因 (14/46)

「名前聞いてる?」
「え?」


幹の声に驚いて周りを見回すと純太も青八木先輩も私の顔を不思議そうな顔して見てた。


「あんまロードに興味でねぇか(笑)」
「そ、そんな事ないです!;すいません;」


幹の側にいた幹のお兄さんである寒咲さんがそう言いながらクスっと笑った。


「名前が見に行きたいつうから連れてきたのにどうした?ぼーっとして」
「うん・・ちょっと」



「小野田は巻島先輩をもの凄ーく慕ってたからね、それ以来坂が登れなくなっちゃったんだよ」


今泉も鳴子も教えてくれなかった事をこの人が教えてくれた。
えっと、誰っていったっけ;

私が入部する前にいた3年の巻島先輩。

小野田坂道はその人に憧れて、その人の背中を追い、その人の様になりたくて頑張って頑張ってIH優勝という功績を残したらしい。

部室に飾られてある写真やトロフィーに残された巻島先輩の大きな存在。

突然いなくなってしまった目標にしていた存在。

いつも笑顔で部室の空気を癒してくれてる小野田坂道のこのスランプに、純太も今泉も鳴子も何も出来なくて当然だ。

それだけ巻島先輩は凄い人だったんだ。


「杉元、余計な事をべらべら喋るな」
「苗字さんだって気になるだろ、小野田の不調の事は」
「気になる?苗字は小野田の登りを知らないだろ」


杉元だっけ・・
っていうか、今泉の言い方がまた嫌みな感じだ。


「どうせ小野田坂道の事何も知らないわよ」
「小野田以外だって知らないだろ」
「これから知っていくし」
「じゃそれまではマネージャー見習いって事だな」
「・・・」



今泉に言われた言葉を思い出し、お店の外で空を何度もパンチした。


「なにしてんだ?」
「!!!」


亡霊の様に浮かんでたその人物の実態が突然現れて慌てて手を引っ込める。


「べ、別に」
「なんでここにいるんだよ」
「は?なんでって来ちゃいけないっての?」


今泉は何も答えず寒咲さんや純太達に挨拶をしながら店内へ入っていった。


「名前」


純太に手招きをされ慌てて店の中へ戻る。


「どうだこれ。乗り心地もいいし、値段もそこまで高くないし、初心者にはいいんじゃないか?」


みんなが囲んだ中に見えた空色と白色、2色のバイク。


「わ!色綺麗!!」
「MERIDAってメーカーなんだがレースに出るってわけじゃないんだろ?ロードを体験する程度だったら充分だと思うぜ」
「MERIDA・・・」


これが自分の自転車になるのかとウキウキで貼ってある値札を見た。
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