ティラミス (楪 綸)
どうしてなのって尋ねたのに、お兄ちゃんはただ悲しそうに笑うだけで、何も答えてはくれなかった。お姉ちゃんたちもそう、いつもならどんなことにだって優しく答えてくれるのに、今は何も教えてくれなかった。 こんなときいつも、わたしは琉依くんに聞いていた。だけど今日は聞くことができない。だってわたしが知りたいのは、どうして琉依くんが死んじゃったか、だから。
バカなわたしは、いつもなんでもお兄ちゃんやお姉ちゃん、それから琉依くんに教えてもらってた。琉依くんはどんなことでも答えてくれてたし、どんな質問をしてもバカにしなかった。それどころか、「綸はいろんなことを知りたがってすごいね」って、ほめてくれていた。
学校にも行きたくない。ごはんも食べたくない。あんまり眠る気にもならない。 わたしは何がしたかったんだっけ。 ……あぁ、そうだ。琉依くんのお嫁さんになりたかったんだ。
どうしたらなれるのって、お兄ちゃんに聞いてみた。だけどお兄ちゃんは、やっぱり悲しそうに笑うだけだった。わたしの頭を撫でて「少し休もうね」って、困ったような顔をしていた。 結婚しようねって約束したのって、お姉ちゃんたちに話してみた。だけど二人とも「琉依くんも綸が幸せになってほしいと思ってるよ」って、よくわかんないことを言われた。 だって幸せになれないよ。琉依くんはもういないんだもん。
わたしはこれから何をしなくちゃいけないんだっけ。全然わかんない。何もしなくてもいい気がするのに、みんなはそんな風には言ってくれなかった。 これからわたしはどうしたらいいんだろう。 だけどもう、誰も教えてくれない。
とにかく琉依くんのところに行かなくちゃ。だって、ずっと一緒にいるのが結婚なんだよって、琉依くんが教えてくれたんだから。
end
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とっぷ りすと
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