サイトを見てる普と八つ当りされる淳のはなし。
前回結果ベスト5 28 多所普 25 明本淳 20 吉崎綾 19 榎本真乃 19 秋吉右京
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「おい淳、やべぇぞ」
顔面蒼白のアマネ先輩に「何がっすかぁ?」と尋ねると、彼はおもむろに一枚の紙を取り出した。
何かのランキングらしく、一位にアマネ先輩の名前があって、オレとリョー先輩が続いている。
「何すかこれ」
「サイトの人気ランキングだよ、見てわかんだろうが」
「あぁー。オレ二位なんすね」
「そこじゃねぇ!」
何故かキレてる先輩にめんどくせぇ、と思いつつも「じゃあ何なんすか」と返す優しいオレ。するとすぐさまアマネ先輩はこう返した。
「ついに綾がベスト3入りしやがった」
そんなことを深刻そうに言われても、何が深刻なのか全く理解できないので何とも言えない。はぁ、と一応相づちをうったが、やはり気に障ったようで「てめぇふざけんな」と蹴りが飛んできた。
「ちょっ……だってリョー先輩ってアマネ先輩くらいモテんじゃん! つか外面いいからむしろアマネ先輩よりモテ……」
「死ね!」
ほら、そんな態度取るから悪いんじゃん。女子って案外そういうの見てるし、あいつらの情報網ってすげぇんだって。
「つか何? お前は綾に負けてもいいってこと?」
んな喧嘩腰に言われても。
「負けてもいいっつーか、勝ててることが不思議っすよ」
「うわ、暗っ! マイナス思考すぎるだろ!」
「だってリョー先輩の普段の顔知ってます? たまに雛元迎えにくるけど、女子にすっげぇ笑顔っすよ。髪型変えたー? とか親しそうに話したりさ。オレ、藍依先輩迎えに行ってもあんなことできねぇもん」
派手なリアクションに苛つきながらも、オレは冷静に説明する。
そこに嘘偽りは何ひとつ入っていない。本当にニノ先輩くらいの爽やかな笑顔で、非常に明るく女の子に話し掛けるのだ。正直見ていて気持ちが悪い。雛元のためかもしれないが、とにかくそのせいで、少なくともオレのクラスでの人気はものすごく高い。
もしも雛元が別れたら、オレは女子達にアドレス書いた紙を託され、伝書鳩の如く毎日のようにリョー先輩の元へ向かうことだろう。そして目の前で引き裂かれる紙を見てため息をつくわけだ。実際今まで何度かそういうこともあった。
それくらい性格が悪い人だが、きっと周りに話しても誰も信じないだろう。雛元はリョー先輩を悪く言わないし、オレが言っても、嫉妬なんて見苦しいよ、てなもんだ、きっと。
「あの異常なサディストが人気とかおかしいだろ!」
「だからー、信じたくない気持ちはわかりますけどね、リョー先輩って人気あるんですって。うちのクラスにも雛元を羨ましがってる子、いますもん」
「サイトっつーのはクラスじゃねぇんだよ! 納得できねぇ!」
納得できないのはわかる。オレだって笑顔を浮かべて首を絞めてる姿を見ると、めちゃめちゃ怖い。腕入れようとか拡張しようと楽しそうに提案する姿も、恐ろしい。挙げ句の果てに精液でベトベトになって倒れてる姿に興奮して、虫の息かってくらい弱々しくなってる女を楽しそうに犯すのだ。
オレならあんな彼氏絶対嫌だ。
「んじゃ、よくわかんねぇけど、リョー先輩のことだから情報操作でもしてんじゃないすか?」
黙らせるために適当に言っただけなのに、アマネ先輩は、それはあるな、とあっさり納得。しかも「今から文句言いにいこうぜ!」なんて言いやがる。
「ちょっとストップ今のなしで!」
慌てて止めると何だよ、と睨まれたが、この程度ですむと思えば安いもんだ。オレがそんなこと言ったってばれたら、リョー先輩に何されるかわかんねぇ。何せ盗聴器くらいついててもおかしくない部室だ。警戒するに越したことはない。
「一位になっても何の得もないのにリョー先輩がそんな手間かけると思いません」
でしょ? と同意を求めると、先輩は考え込むように視線をそらし、不本意そうに「まぁ、そうだなぁ……」と口にした。
アマネ先輩の方が親しいんだからそれくらいわかってる気もしたけど、どうやら分かってなかったようだ。考える前に結論を出したと言った方が正しいかもしれない。先輩ってよく周りが見えなくなるから。
「っつーかアマネ先輩、こういうの気にするんすね」
「ったりまえだろ!」
あまりの勢いに気圧されながら、オレはとりあえずアマネ先輩の話を聞いてやる。
「人気っつーのはな、誕生日やバレンタインに深く深くふかぁぁぁく関わってくんだよ!」
「あぁ、そういうことっすか」
アマネ先輩らしいけど、そういうのを素直に口にしちゃうところも悪いんだと思いますよ。指摘したって蹴られるだけだから言わないけどね。
「どうすんだよ、今の調子だと近いうちにぬかれるぞ」
「んなこと言われても、オレは別にいいし。モテたって嬉しくねぇし」
「あぁそうかよ!」と拗ねるアマネ先輩をまぁまぁ、となだめる。
「じゃあリョー先輩の好感度下げりゃいいんじゃないっすか?」
「どうやってこれ以上下げるんだよ」
「あー、確かにサイトじゃ散々酷いことしてますもんねぇ。むしろ今回の話であがってたりして」
「ざけんなクソ野郎!」
アマネ先輩の罵声が響いたところで、リョー先輩が静かに入ってきた。多分オレとアマネ先輩が喧嘩してるとでも思ったんだろう。オレ達の存在なんて見えてないような態度で、スマホ片手に定位置である一番隅に座った。
「お前が何でモテるんだよ!」
アマネ先輩は前振りもなくリョー先輩に言い放つ。何が? と、当然理解できないリョー先輩。
「サイトのランクだよ、クソ! 何で最近お前あがってきてんの?」
アマネ先輩がこんなに息巻いて喋ってんのに、リョー先輩は、あぁあれねー。と呑気なものだ。
「淳があがってきたんは気にせんのな」
「淳はどうにでもなるし」
「どういう意味っすか。つかリョー先輩もちゃっかり見てんじゃん」
「そりゃまぁネット趣味だし」
これ、マジで情報操作あるんじゃねぇの、って疑ってると、アマネ先輩が割って入った。
「お前、何したんだよ。素直に吐け」
「何しとるかアマちゃんが一番知っとるくない?」
そうだけど……と、急に黙り込むアマネ先輩。口喧嘩がホント弱い。
「つかあれ、モテるかどうかじゃねぇだろ」
「じゃあ何だってんだよ」
「変態番付じゃないん?」
笑ってるリョー先輩を見て、オレ達は二人揃って固まった。
「だってこんな変態サイトで人気あるってそういう意味だろ」
言われてみれば確かにそうだ。そうだけど、認めたくない。それはアマネ先輩も同じだったらしい。
「俺は変態じゃねぇよ!」
声を荒げるアマネ先輩を見て、リョー先輩はまた笑う。
「淳は変態だけど」
「何さりげなくオレ下げてんすか。オレは単にエッチがうまいだけっす」
「うまいってか、長いんだろ」
「長いのが変態じゃないっしょ? それなら女体盛りとか確実に変態プレイですよね」
「はぁ? てめぇのネチネチした長ったらしい言葉も十分変態だろ、クソが」
また喧嘩が始まりそうなオレ達から、リョー先輩は視線をスマホへ戻す。
「それより、淳」
「はい?」
「お前、色々言ってくれてんな」
「……何のことっすか?」
恐々顔を向けると、そこにあるのは冷たい笑顔。
やっぱり盗聴器があってさっきまでの会話を聞かれていたのか、と思い返すが、そこまで悪いことを言った覚えもない。
なんだ鎌かけられただけか、とホッとしたのもつかの間。
「サイト見とるっつったよな?」
画面からオレにチラッと視線を送るリョー先輩。
っつーことは、この話も載るってことか?
うそ、マジで? 何で作者オレを語り手にしたわけ? 何かの陰謀じゃねぇの?
「さて、お前の話をしようか」
「はぁ? 淳の話してどうすんだよ」
話を聞いていなかった上に全く理解してないアマネ先輩に乗っかって「ですよね、オレの話なんてしてもつまんないっすよ。オレ普通すぎてネタにもなりませんよね」と慌ただしく言って逃げてきた。
で、読者の皆様にこの場を借りて言っておきたい。もしも彼等がオレについて何か言ってたら、それは嘘なんで絶対信じないでください。先輩達がオレを陥れようとしてます。
誰か助けてください。
おしまい。
ただ淳が書きやすいからでした。 続きはないからひと安心。
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とっぷ りすと
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