しびれ

2011/01/27 23:02


背中を押す、なんてやさしいものでは無い。押しのける力が背中にありったけ込められてしまって、その勢いで前のめりになる身体を支えるために、足を一歩踏み出す。なおもジリジリ加わる圧に耐えかねて、突き動かされて走り出してしまった。昨日の安寧の話。



あなたで八人目かしら、製本室の事務員さんは言った。周りの友人たちはまだ執筆真っ只中であったり、いっそ神経質なくらいに修正を重ねていたり、私の安穏ぶりのほうが何かの間違いなのではないかと思えるほどだ。何しろまだ締切五日前なのだった。たまたま居合わせた他ゼミの学生や教授と労い合いつつ、かしょんかしょん、ううん、製本機の音に耳を傾けていた。

無事に製本された論文を検分し、事務員さんにお礼をしてから受付へと向かう。ローリーズの黒のブーツは何とも私好みのデザインであるのだけれど、靴底が冬仕様で無いのが難点だ。さらには大変に足場の悪い日であったから、ここですっ転んで論文を駄目にしてしまったら傷が大きい。あれほど雪道を歩くのを厭うた日は無いだろう。





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