Shape of My Wings | ナノ



・・・

洗濯物は苦手だ。
面倒臭さが先立ち、どうしても後回しにしてしまう。今日も悪魔に怒られて、渋々と洗濯物を手にしていた。長いあいだ暗い場所にいたせいか、太陽の光が眩しい。白いシーツを広げながら目を細めると、そこに翼のような影が映った。
「リーリエ」
優しく響く低い声にハッとして振り返る。
そこには、白と黒の翼を持った男が立っていた。
「ガレア様…?」
「ルカから話を聞いて来た」
ガレアと呼ばれた男は、そう言って微笑んだ。彼こそ、幸運の神様である。
リーリエが罪に問われた際に味方となり、刑が軽くなるよう手を尽くしてくれた恩人だ。リーリエが無事であることを、守護天使のルカがこっそりと報告してくれていたようだった。
「その節は、本当にお世話になりました」
深々と頭を下げるリーリエに、ガレアは困ったような顔をする。神も万能ではないと、彼自身が誰よりも知っていた。
「いや、俺は君を助けることが出来なかった。大衆のため、苦しませてしまい本当にすまない」
「いえ、ガレア様はお立場もありながら戦ってくださいました。それに、すべて承知の上で受け入れたことですから」
明確な罪がなくとも、堕天の印を持つ者を許すなというのが大衆の声だった。リーリエの味方をしたくても、神として、ガレアは他の天使たちの不安を無視するわけにはいかなかった。
だから、せめてもの救いとして、追放となったリーリエにほんの少しだけ幸運を与えていた。もしかしたらそれが、今に繋がっているのかもしれない。
「君に幸運が訪れたようで良かった。ここなら迫害を受けることもほぼ無いと思っていいだろう。ブロウたちもいるしな」
「はい。わたしは大丈夫です」
嬉しそうに頷くリーリエに、ガレアは優しく微笑んだ。

そんな二人の様子を、少し遠くから眺めている人物がいた。
そよ風に揺れる二色の髪と、天使の持つ独特の眩さに眉を顰める。端正な顔立ちをした神様が、どうにも気に入らなかった。
やってきた赤髪たちが声を掛けたが、どうやら彼には届いていないらしい。その視線を追ったアイリスが「あっ」と声をあげた。
「あそこにいるのって…」
アイリスの口から答えが出るよりも前に、ライラックの翼は動き出した。芝生の草が低く跳ねて散っていく。赤髪たちは慌てて彼を追いかけた。なんとなく、一触即発の気配がしたからだ。

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