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空を飛ぶ不思議な島に、堕天使はいた。
湖を映したような碧く大きな瞳に、プラチナブロンドの長い髪。白い翼と肌が太陽に反射して輝く姿には何の淀みも無い。頭からつま先まで、すべてが美しい人だった。
知らない者は誰もが、彼女を『天使』と呼ぶだろう。
しかし、彼女には“印”があった。大罪を犯した天使に押される烙印…堕天の印だ。それは呪いのように、純白の天使を蝕んでいった。
彼女がどんな罪を犯したのかと問われれば、“生まれてきたこと”としか言えない。眩いほどの天使は、罪を犯すまでもなく、その印を身体に刻んでいたのだ。
言ってしまえば《生まれながら》にして堕天使だったのである。
そして、無実の堕天使はつい先日、悪魔と共にここへやってきた。
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