PERSONA5 the FAKE | ナノ


05

「来ないかもって思ってた」

それが、彼女の第一声だった。集まった四人を見て、組んでいた手を解く。
「“改心させたい相手”って誰なの?」
杏が問うと、真は少しだけ間をおいた。
「…あるマフィアの“ボス”」
「マフィア!?」
「何言いだしてんだ!?」
何もかもが予想外だ。彼女が何故その人物を改心させたいのか、どういう経緯で知ったのか、疑問点があまりにも多い。しかし、真は冷静だった。驚きを隠せない後輩たちを見て、ゆっくりと説明を始める。
「図に乗ってそう名乗ってるそうよ。フィッシング詐欺の元締めらしいの。最悪なのは、ヤツらに目を付けられたら、徹底的に脅され続けること。詐欺の片棒を担がされて、家族まで脅迫して破綻するまで追い込む。…うちの生徒にも被害者がいるらしいの」
「うそ…」
「彼らは子どもを中心に狙ってる」
真が動いているのは、秀尽の生徒にも被害者がいるからだろう。恐らく、その解決を校長から押し付けられたに違いない。
「そのボスの名前は?」
蓮が問うが、真は肩をすぼめて首を振った。
「さあ、わからない。彼らに脅されて誰も証言しないから、警察ですら実情を把握できてないそうよ」
「そこから調べろってこと!?」
杏が信じられないと言ったように声を上げる。それに、真は冷ややかな目を向けた。
「『正義』を語る怪盗団なら、それくらいやってみなさいよ。それとも、明智君の言うとおり、正義なんて存在しないのかしら」
彼女の挑発に、言い返す言葉が見つからない。と、そこで咲の唇が動いた。
「…もっと詳しい情報は無いんですか?新島先輩なら、それくらいきちんと持ってきてくれると思ったんですけど」
咲の表情は普段と変わらない。ただ、ここで言い返すあたり、かなりの負けず嫌いだ。真は咲の方を見て、それから不機嫌そうに視線を逸らした。
「…彼らは渋谷を中心に活動してる。それだけが頼りの情報」
「ウチの学校の被害者は…?」
「悪いけど、それは言えないわ。…そうね、期限は2週間。過ぎれば、すべての証拠を警察と学校に提出する。私の期待、裏切らないでね」
真は有無を言わさぬ口調で言い放ち、颯爽と屋上を後にした。
残された蓮たちの溜息が低い曇天に吸い込まれていく。
「完全に向こうのペースだったな」
「上から指図しやがって…」
納得いかないことの方が多いが、動かないことには何も始まらない。四人は、待っている祐介に報告するためアジトへと向かった。


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