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「ストーップ、二人とも!あんた達の言い分は把握したわ。けれどね、“近所迷惑”って言葉知ってる?」
「だってよぉ、ベジータがー」
「フン、カカロットのヤツが悪い」

尚も言い募ろうとする二人に、ブルマの血管が切れる。

「だまらっしゃい!この穀潰し男共!!私は忙しいの!子供じみた喧嘩なら余所でやってちょうだい!!」

余りの剣幕にベジータ&悟空は「ひっ」と吃驚してお互いを抱き締め合った。
寝不足も祟ってか、二人はそのままの勢いで彼女に追い出されてしまう。
悟空は兎も角、何故に夫である己まで……とぶつくさ文句を垂れる元王子様にとどめの一言。


「ベジータ、あんた暫くご飯抜きだからね」
「何!?」




そんなこんなで、追い出された二人は仲良く空中を漂っていた。
足元を見れば、就寝時間と言うのも手伝って街の灯りは小さいものばかり。
普段なら、それもまあまあロマンチックで悪くはなかったが。

「……ベジータのせいで怒られちまったじゃねえか」
「元はと言えば貴様が抵抗するからだろう」
「闘るなら手加減しねぇぞ」
「望むところだクソッタレめ」

さっきから口を開けばこんな調子なのだ。
折角二人で居るのに、こうも刺々しい雰囲気が続くと疲れも溜まる。

ベジータとの手合わせだって、本来なら楽しみたいものであるのに。
其処まで思考して、悟空は不意に今まで目を合わせなかったベジータを振り向いた。

いきなり視線が搗ち合った事により、相手からは少なからず動揺が見て取れる。
しかし、悟空がぽつりと零した一言によって、怒りが再来する訳なのだけれど。


「ヘンタイ」
「何だと?」
「ヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイ!!」
「殺されてぇのか、貴様!」


突然の変態連呼攻撃はベジータの高いプライドへ、大いなる傷を付けたようだ。
触発されて超化した彼の眼差しには、紛れもない殺気が滲み出ていた。

しかしそれも、悟空の大きな両目からポロポロと溢れる大粒の涙を認めるまでの話である。


「!?な、なな何だそれは!!」

「ど、どうせベジータはオラのことなんか嫌ぇなんだろ!つ、都合の良い時にやれるダッチワイフくれぇにしか思ってねーんだ!!ひっく!」

「お、おい!?何処でそんな言葉覚えて……っ」

「もういい!ベジータなんかオラも嫌ぇだ!!悟飯の言った通り、オラのカラダだけ目当てなヘンタイなんか……!うう、ぐすっ」


悟飯!?そうか、アイツがカカロットに余計な言葉を吹き込みやがったのか!

サイヤ人の王子らしくもなくあわあわとしながら、ベジータは悟飯の名前を脳内ブラックリストに刻み込む。
そうしてグシグシ両目を擦る、未だ超サイヤ人な癖子供っぽい悟空の仕草に胸を打たれたのか、漸く観念の色を見せた。

「いい加減にしろ、みっともねぇ。オレがいつ、貴様を身体だけの性欲処理道具扱いした」
「……悟飯がそう言ったんだよ。だからオラ、そんなワケねぇだろって……今日はしねーっつったのに」

どうりで今日は様子がおかしかった筈だ、とベジータは頭を抱える。
それもこれも、あのファザコン息子の魂胆に踊らされていたのだ。
何て単純なのか。自分も悟空も。

一気に脱力して、ベジータは金髪碧眼から通常の状態へと戻る。
悟空はまだ疑わしげに此方を見つめてはいたが、涙だけは止まったようだ。
目元を赤く染めながら視線を寄越す男は、とても年相応には見えなくて可愛らしい。

ベジータは途端に馬鹿馬鹿しさを覚え、警戒を解けないでいる悟空を抱き寄せてやった。


「悪かったなカカロット。貴様が其処まで思い詰めていたとは気付かなかったんだ……許せ」
「……ベジータ」

すると悟空の方からも遠慮がちに腕を回しては、ベジータとの密着を図る。
黒色に変化した髪が、完全に相手の非を許す心を表していた。
色々と感情を引っ掻き回されもしたが、以前よりも親密度が増したと言う事でひとまずは一件落着。


但し、若干不愉快そうな約一名を除いて。



「ってなワケでだ。メシ抜きの間、ベジータを家で預かる話になったからヨロシクな!」
「世話になってやるぞ」

今から眠ろうとした矢先に、突如として舞い込んだ厄介事。
更なる大食漢を引き連れていらっしゃった旦那に、妻であるチチは説教する気力も起きなかったらしい。

ついでに元凶の悟飯は、と言うと。


「ベジータさんとお父さんが同室!?だ、ダメですよそんなの!!」
「そっただこと言われても、他に余ってる部屋なんかねぇんだ。仕方ねぇべ」
「だったらお父さんとボクを同室に……!」
「馬鹿なこと言ってねぇで、おめぇもさっさと寝ろ」

必死で母親に頼み込む姿は少々哀れだが、ある意味これも自業自得だ。
その後、勝利の笑みを浮かべたベジータが父親の腰を抱いて寝室へ引っ込むのを、端から悔しそうに見守る悟飯がいたとか。




end








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