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And Kiss


晴天の夜空、鏤められた星屑を映し出す湖の中心へと、一層幻想的な黄金を纏って佇むお前が居た。



水面に反射する星々は、まるで男の輝きを引き立てる装飾品のよう。
衣服を纏わぬ象牙の肌はしとどに濡れ、醸し出される色香を隠す事をも知らないらしい。


すると、ふう、と息を吐き出した金色の男は、先程から微動だにしない気配の方向を見据えた。
幾ら夜の帳や深い色の木々達がその姿を覆ったとて、露出した儘の“気”だけは嘘を吐かない。

ただ、何故そんな場所で声を掛ける素振りも無く、此方を見詰めているのだろうか。
先程から彼の強い視線が余すところ無く全身に刺さり、多少居心地が悪かった。
故に物言わぬ相手の代わりとばかりに、痺れを切らした此方側が尋ねてやる事にする。


「よぉ、ベジータ。おめぇも修業か?」

静寂に囲まれた其処で、彼の高い声は良く通った。
だから聞こえない訳じゃ無いのだろうが、僅かに逡巡の色を見せた相手の気配はやはり動かない。
逆立った黄金色の髪を掻き、男……悟空は困惑した風に首を傾げる。

「おーい、ベジータ?」

再度問い掛ければ、ようやっと湖畔に現れた彼の姿に安堵した。
生憎と木陰が表情に被さっていた為、意図はさっぱりと読めず仕舞いであるけれども。
それでも、嫌っている筈の自分に近付いて来たと言う事は、ベジータなりの用件があるのだろう。

そう思った悟空は、水面を掻き分けて相手が話し易い距離にまで接近してやる。
ベジータの足元付近は浅瀬だった所為か殆ど裸体を晒してしまう状態となったが、さして気にする悟空ではなかった。

然れどもこれは見間違いかも知れない。瞬間的にベジータの顔が朱色に染まっただなんて。


「そっか。精神と時の部屋での特訓、終わったんだな。前に会った時と比べて、随分と腕が上ってるぞ」
「……チッ、嫌味な野郎だ。それでも貴様には到底敵わんのだと言いたいのだろう」
「え?いや〜……別にオラ、そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ」
「いちいちアタマにくる野郎だぜ」


ベジータは吐き捨てて、悟空から顔を背けた。
それは目の遣り場が無くなっての行動だったが、悟空にとってはいつもの不機嫌としか映らなかったらしい。

一言「服を着ろ」と注意すれば済む話だと言うのに、敢えてそうしない己に苛立つ心理がベジータを常の如く不機嫌に見せているのだ。
大体、何ゆえに同じ男の裸を目にしただけで此処まで動揺させられねばならない。
募る苛々に、思わず靴を鳴らした。

そんな時である。

「なあ、ベジータ!おめぇも一緒に水浴びしねーか?キっっモチイイぞー!」
「!?」

思わぬ誘いにベジータの心臓が跳ねたのは。
信じられない物を見るかのように悟空を窺ってみれば、彼はエメラルドグリーンの双眸をキラキラさせて自分を正視して来る。
その瞳が余りにも純粋過ぎて、罪悪感を覚える邪な心を無かった事にしてしまいたい。

「な、何で、こ、この俺がそんな真似……っ」
「いいじゃんか、裸になるくれぇ!ほらほら!」
「やや、やめろ!カカロッ……」

完全に楽しまれている。
このまま遊ばれてたまるか、とばかりに力強く腕を引っ張る悟空を撥ね除けようと試みたベジータだったが、向こうの勢いに巻き込まれて(そもそも超サイヤ人化した相手の腕力に敵う訳が無かった)頭から湖に落ちてしまう。








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