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戦いへの決意


其処は真っ白な閉鎖的空間内。
徐に目を配れば、眼界へと捕らえたのは果てなき地平線。
白と白とが交差する光景、薄い空気、何倍もの重力には未だに眩暈が絶えない。


けれど、と入り口付近の段差に座り込んで束の間の休息を取っていた少年は、不意に顔を上げた。
そして真っ直ぐ視線の先を見据える。
途端に高鳴る鼓動や言い知れぬ狂喜を内に秘め、それでも尚“彼”を目視するのだ。

凛々しくも美しい、煌めく黄金のオーラを身に纏った実父の勇姿を。


(……綺麗だなぁ)


父親を眺めるこの瞬間だけは、眩暈や少ない酸素も、重い身体さえ気にならない。
ただうっとりと、修業に打ち込む青年の姿に魅入られる。
彼は戦っている最中こそが一等輝いているのだと、その都度思った。

故に自分も、父親のそんな姿を脳裏に焼き付けようとして戦に参加するのだろう。
例え母親に叱責されても。


自分は純血のサイヤ人である父と違って、どちらかと言えば戦闘は好まない方だ。
なのに現状と言ったら、自らの意思で戦場へ赴く為の修業に励んでいる。

確かに危険極まりないセルを止め、人々を守る使命感にも突き動かされはした物の。



「!」

物思いに耽っていれば、突然目の前が爆発した。
どうやらマイナス四十度の白い世界で、悟空が氷山を粉々に砕いた所為らしい。
濛々と立ち込める冷気の煙霧を掻い潜った悟飯は、父親の無事を確認しようと慌てて周囲を見渡す。


「お父さん!お父さん!?」


次第に塞がっていた視界もクリアになり、霧の中でうっすらと光り輝く存在を目にした。

氷の粒子がキラキラと舞い散り、発光する青年の身体を更に眩く彩って何とも幻想的に映る。
悟飯は声を掛ける事も忘れ、ただただ夢中で父親の様相に全神経を奪われていた。


これが、超サイヤ人。
身震いする程、蠱惑的なその魅力。

こんな風に、自分もなれたら。



「よし悟飯、メシにすっか!」
「……は、はいっ」


明るい声音に呼び掛けられ、咄嗟に返事をする悟飯。
我に返れば、既に父親は元の黒髪、同色の瞳へと戻っている。
黄金の輝きは幻の如く失せ、金色の髪も碧眼も漆黒の闇に沈んでしまった。

しかし刺々しい父親の雰囲気が和らいだのを認めて、ホッと安堵の息を吐く己がいる事も確かである。
複雑な気持ちを抱えつつ、少年はいそいそと貯蔵庫を物色に掛かった父親が、食料を選ぶのを待った。






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