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2


悟空が自信満々の表情で「ホラ」と指差す先には、微かな灯火。
ベジータは霞む両目を瞠って、今までよりも幾分か開けた、それも既に懐かしくすら思える文明が息衝く場所を見渡した。


「もしもの時の為にってよ、ブルマが残しといてくれたんだ。この場所を……」
「ブルマが……」


そして空間の中央に佇むロケットに似た乗り物へと近付き、ベジータを抱えたまま頼りない舞空術で浮き上がる悟空。
彼はハッチの開閉ボタンと思しき突起を躊躇なく押した。
すると、確かに上部へ備え付けられた乗降口は、彼らの目前で受け入れ体勢を整えて行く。


「……カカロット、これは一体?」
「タイムマシンだって、あいつは言ってた。今からこれに乗って、セルが現れるより前の過去に行くんだ」

恐らく、もう二度とこの時代に戻っては来られないだろう。
とは言え自分達以外の人間が全滅してしまった世界にいるよりは、考えるまでもなく何倍もマシだと悟空は笑った。

「人造人間が相手なら、今のオラ達でも何とか倒せる。だからセルが未来からやって来たって、その前に人造人間達を倒しちまえば……」
「奴は完全体になれない、か」

そう言ってタイムマシンと称された乗り物を見下ろし、次にベジータは隣りの悟空を横目に身遣る。
やはり、何処かしら顔色が芳しくはない。
長年の心労が祟ったのだろう、無念の内に亡くなってしまった戦友達の姿を浮かべ、それも無理からぬ話だと結論付けた。

彼らを供養する意味でもタイムマシンで時代を遡り、二人で平和を掴み取ろう。
ベジータは意を決して、操縦席に乗り込んだ。
その際に身体のあちこちが軋んだが、これから訪れるだろう幸福を考えれば大した苦痛ではない。

そして、ベジータは手を差し伸べた。
己が認めたライバルであり、生涯を賭けて愛すると誓った男へ。

なのに悟空はやんわりと伸ばされた手を押し返し、此方の了解も得ず一方的に機体の発進スイッチをオンにしてハッチを閉ざした。
何の真似だ、開けろ、と内心焦りで一杯になりながら外界と自分を隔てる透明な扉を叩くも、弱った腕では罅一つ入らない。

ベジータが相手の意図を察し切れずに苛立ちを募らせる中で、悟空はただただ穏やかに眼前の彼を見つめていた。



「カカロット!!」
「ベジータ……おめえだけは、死なせねぇ」


生憎と音声はくぐもって聞き取りにくく、ベジータは相手の言葉を必死に拾おうとして唇の動きを読む。
更に二人を引き裂くようなエンジン音が唸っても、何故だか悟空の笑顔から目が離せずに。








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