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2


予定ではこの先の広場でロマンチックさを演出しようと企てていた彼だが、些か気持ちが逸ってしまった模様。
背後でゴソゴソとプレゼント用に包装された箱を開く悟空の気配を感じながら、自身への怒りと羞恥心に苛まれて舌打ちするのであった。


「これってさあ、アレだろ?女が着けるヤツ……そうだ、ぺんだんとっちゅーヤツだ!」
「ふん、今時男だってアクセサリーくらい身に着ける」

と言うのは、ブルマの受け売りだが。
悟空は「ふぅん」と興味なさそうに漏らした後、手にした小振りのシルバーアクセを色んな角度から物珍しそうに眺めていた。

確かに可愛らしい星形が揺れる装身具である。
これを選んだのがベジータだなんて、目を疑う程だ。

でも、わざわざ自分へプレゼントしようと苦労して選んでくれたのだから、喜ばない訳にはいかない。
多分、こんな奇跡に近い出来事は、この先一生起こらない気がするから。


「サンキュー、ベジータ!」
「気紛れだと言っただろう。礼など必要ない」
「それでもだ。おめぇとの距離が近くなったみてーでさ、オラ嬉しいよ」


溌剌として告げられた言の葉を聞いて、ベジータの全身が一気に熱を上げた。
そんな彼が頑なに振り返ろうとしなかった理由は、やはり茹で蛸よろしく火照った顔面を見られたくない一心だったのであろう。

勿論接触済みの掌から、その様子は悟空に伝わっていたけれど。
「たまにこう言う日があったって良いか」なんて、知らぬ素振りで殊更強く絡んだ手を握り締める。

(あちぃや……)

そして何故だか、悟空の体温も釣られて上昇したようだった。





「おっとォ!」
「あっ」

お互いがお互いに気を取られていた最中、大分と人気も少なくなった場所で突如として大柄な男が勢い良く悟空の肩へとぶつかって来た。
周囲に意識を配っていなかった事と驚愕で、覚えず指から零れ落ちてしまったペンダント。
軽い音を立てて地面に横たわったそれは、瞬く間にやって来た別の男の足下で、無惨な姿へと変貌を遂げたのである。

悟空は大きな両目を瞠り、心なしか不快感に眉根を寄せた。
だが男達は踏み潰した装飾品を尚も愉しげに砕きつつ、下卑た笑みで口元を歪めて言い放つ。

「悪ィ悪ィ、余所見してたモンでさー」
「つか何、オニイチャンらカップルなわけ?うわー俺初めて見た!」

明らかに蔑みを帯びた視線と口調で、二人は未だに手を繋いだ儘固まっている悟空達を指差した。
然れども数瞬後、ベジータは鋭い殺気を視線に込め、悟空の手を振り払い。

「貴様ら、覚悟は出来てるんだろうな?」

低く唸った。
ボキ、と拳を鳴らして男達へと近付くベジータは、既に手加減だとか言う甘い考えは捨てているようである。
彼の脳内では己の攻撃に平伏す無様な二人組のイメージが、絶えず再生し続けているに違いない。
それを実行に移すのに然程時間は掛かるまい、と拳を振り上げた所。

腕を広げて彼の暴行を阻んだのは、先程から沈黙を守っていた悟空だった。








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