※現パロ
『寂しいなぁ…。』
一人きりの部屋でポツリと呟いた。
独り言は強い雨の音と一緒に虚しく消えていった。
それが余計寂しくなり、読んでいた本を閉じた。
6時過ぎをさしている時計の秒針が静かな室内に一秒一秒音を刻んでいく。
仕事から早く帰ってこないかと、水滴がついている窓の向こうを眺める。
見えるのは、濁ったような色をした雲に覆われたどんよりとしている空と、道路を通る車や傘を差して帰路を急ぐ学生たちだと分かってはいる。
天気の所為なのか、気分まで暗くなってくる。
今度は適当にとった雑誌をパラパラと捲ってみるが、全くといっていいほど内容が入ってこない。
『帰って来てよ十蔵。』
また呟いてみたが、言ったところで帰ってこないのは分かっている。
そんな自分が嫌になり、ソファに俯せる。
ソファの生地は思った以上に心地よかった。
少しくらい寝ても大丈夫だろう、そう思って瞼を閉じたならすぐに眠れそうなくらいだ。
暇潰しに音楽でも聴こうとタッチパネル画面を弄り、イヤホンから流行りの音楽を流す。
だがやはりもの足りない。
何が足りないのか分からないが、明らかに何かが足りない。
そんなとき、彼の…十蔵の顔が頭を過る。
彼に会いたくて仕方なくなって、知らずのうちに涙がこぼれていた。
その涙はなぜか、自分でも驚くほどにポロポロと溢れる。
ただ溢れる涙をぼんやりながめていると、玄関のドアが開くような音がした。
急いで駆けつけるとやはり、待ちに待った人だった。
『十蔵!!お帰りなさい』
「ただいま、***。どうした、目の辺りが真っ赤だぞ?」
抱きつくことしか考えていなかった***は、涙を拭くことを忘れていたことに気付き服の袖で拭こうとすると、十蔵からハンカチを渡された。
「遅くなってすまなかったな」
『バカ…、』
傍にいることを感じながら、また彼に抱きつく***。
十蔵はゆっくりと彼女の頭を撫でる。
二人の顔には満面の笑みがこぼれていた。
何かが欠乏。
――答えは貴方だったんですね、
title by:DOGOD69