−8限目− 【それでも限度ってものはある】 「あ〜楽しかった〜」 「そうだな…」 一周終えた観覧車。 名前は初めての観覧車にご満悦、土方は、短時間での様々な緊張からの解放感で地に足を付ける。 並んで出口の方へ歩いていると、そこに山崎と沖田が立っているのが見えた。 「あ、降りてきた!」 「土方コノヤロー、何勝手に名前と乗ってんでィ」 「たっ、たまたまだ!」 「とか言って、偶然を装ったんじゃねーですかィ?あーあ気持ち悪ィや」 「違ェって言ってんだろうが!!」 顔を合わすなり言い合いを始めた沖田と土方に、名前と山崎は苦笑いを零す。 そして同時に、土方と観覧車を乗る切っ掛けになった人物を思い出し、名前は「あ、」と声を上げた。 「そういえば、近藤くんは大丈夫だったの?」 「あー…うん。あの人もタフなもんだよ。懲りずにまた姉御を探しに行ったよ…」 「姉御って……妙ちゃんか…。愛の力は偉大、だね」 「でも従業員の人とかに怒られてたみたいだけど……」 「……大丈夫かな…」 呆れるような溜息と共に紡がれた山崎の言葉。 名前は近藤の深い?愛情表現に関心するような、お妙の立場を察するような、学校としての面子やら―――複雑な気持ちになっていく。 「――それより苗字さん、お土産買った?」 「ううん?え、もうみんな買ったの?」 「今から買いに行くとこなんだ。だから苗字さんも一緒に行こうよ」 「うん!」 「抜け駆けはダメだぜ山崎ィ」 折角来た遊園地。思い出作りも兼ねて、最後まで満喫したい。 山崎の誘いに大きく頷いた名前の後ろから、黒いオーラを纏った沖田が顔を出した。 「別に抜け駆けじゃ…」 「名前、行きやしょう」 「っ!う、うん」 「「…いや、抜け駆けはどっちだよ」」 沖田は隙を突いて名前の手を引くと、そのままスタスタと歩いて行ってしまう。 その背中に向かって土方と山崎は綺麗にハモりつつ、足早な二人を追い掛けた。 . [章割に戻る] |