−6限目−
【不良の席は一番後ろが常識】





―――普段なら一分もかからない教室までの距離。
だが、鉛を引き摺っているような重い足取りで歩いていた土方は、五分以上かけてやっと教室に到着していた。






「今年は遊園地らしい」


―――そして彼の口から放たれた言葉に、クラス全員の動きが止まった現在。



「………今何て?」


「遊園地」

「「は?」」


土方が銀八から聞いた今年の遠足は、遊園地という、ある意味で衝撃的な場所だった。

銀魂高校が毎年遠足に行くこの時季、何故だかZ組のみ、子供の楽園・遊園地がその場所。



「にしても何で遊園地なんでィ?」

「知るかよ…。俺だって聞いたけど言わねーんだよアイツ!」

「自分がハシャぎたいんですかねィ」

「銀ちゃんはこのクラスで一番子供アル」

「でも、先生は基本面倒くさがりだよ?なんで急に…」


確かに坂田銀八という人間は、“いい年して子供みたい”というタイプではあるが、新八の言うように、所謂“ハシャぐ単純な子供”という訳ではない。
どちらかと言えば、“若干ひねくれた子供”タイプである。



「まァ、銀八のことだ、遊園地だったら何も考える必要無ェからとか、どーせそんなとこじゃねーの?もう考えるのも面倒くせェ…」

「それ、ありえるな…」

「生徒を振り回すのは勘弁してほしいわね」


皆がこの場に居ない担任教師へ小さい悪口を吐く中、名前は苦笑いを零しながら、眉間に皺を寄せている土方へ視線を移した。



「遊園地なんか行って何すんだろうね…」

「遊園地っつったら遊ぶ以外ねーだろ」

「だよね」


“ほんっと分かんないな、この学校…”



「ハァ……」

「お疲れですね、トシさん」

「あァ…まァな……」


相変わらず理解し難い事ばかりのこの学校と、戻ってきて以降若干老け気味な土方に顔を引きつらせる名前。



(ヴー、ヴー)


「?………ぁ」


すると、自らのポケットの中にある携帯が突然鳴り、名前はそれを取り出す。
開き、新着メールを押した瞬間、ディスプレイに出た名前を見ながら小さな声を漏らした。



「どうしたんですかィ?」

「ううん、何でも」

「ふーん………」


携帯に気を取られていると、沖田が横からひょこりと顔を出した為、慌ててそれを閉じる。
決してメールを見られたくない訳ではないが、もしまた何か起きると面倒だと判断しての名前なりの防衛。

その行動を不審に思われたのか、沖田にじとりと見詰められ、その眼差しに戸惑う名前。

如何したものかと考えていると、やはりお決まりなのか、名前と沖田――と言うより、沖田目掛けて何かが飛んできた。



「サディストォォオ!名前に近づくなってあれほど言っただろーがァァァ!!」

(ドコォ!)

「危ねーだろチャイナ!テメーはすっこんでろ!」


「やめろ!お前らが暴れるとこのクラス壊れんだよ!!」

(ドカァァァン!!)

「言ってる側からお前らァァァ!!!」

「ギャァァァ!!」

「うるせェェェェ!!!」


名前を巡って争う神楽・沖田を筆頭に騒ぎ出した(暴れ出した)3Z。
そんな中、名前は少しずつその場を離れ、被害を被らないよう、そして気付かれないように教室を後にする。




「…ふぅ―――…よし」


再度携帯を確認し、足を軽くすると、左右を交互に見、目的地へと向かいだした。






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