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From:高杉晋助
Sub:無題
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屋上来い

−END−

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携帯電話を鳴らしたのは、高杉からの呼び出しメールだった。



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To:高杉晋助
Sub:RE
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了解です!何か飲み物は?

−END−

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From:高杉晋助
Sub:RE2:
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いや、いらねーよ

−END−

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To:高杉晋助
Sub:RE3:
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分かりました!

−END−

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「今回はパシリじゃなかった。――あ、もしかして…」


独り言を言いながら、彼同様に簡潔なメールを返す名前。

彼に対して敬語の文章を打っていた自分に苦笑いを零しつつも、“お礼の内容決めてくれたのかな?”と頭に浮かべ、足を徐々に速めて屋上へ向かう。




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屋上に着き、梯子の前で軽く身嗜みを整えると、何時も高杉が居る場所へ。



(カンカンカン……)



「――あの〜、お呼びでしょうか?」


顔を出し、瞳に映った彼に問い掛けると、やはり怠そうに寝そべっていた。
緩やかな風に靡く黒紫の髪がなんとも心地好さげ――と思ったのも束の間、何処か不機嫌に見えるその顔。




「遅ェ」

「す、すいませんっ」


(カサッ)



そこまで待たせた訳ではないが、とりあえず彼の目前で正座をし、名前は頭を下げる。
そんな彼女膝の上に高杉は仏頂面のまま何かを投げ、半身を起こした。



「……?これは?」

「見りゃ分かんだろ」


名前が不思議そうに持ったそれは小さい菓子パン。
確かに見れば分かるが、疑問に思っているのは其処ではない。

がしかし、此処で漸く彼の「遅ェ」の意味は分かった気がした。菓子パンには生クリームが使用されており、それが若干緩くなってパンからはみ出ている。



「…どうしたの?これ」

「さっき女が押し付けてったんだよ」


「お、女……」


「俺ァ要らねェ」

「えっと……」


「やるっつってんだ」

「え…あ、ありが、とう」


“言葉足らず”という例えの典型な高杉。
“女”という単語にも一瞬引っ掛かってはいたが、名前は眉を下げつつ、「やる」と言われ、自らに託されたパンを有り難く受け取った。



「……教室持ってくのもアレだし、食べていい?」

「あァ」


朝食時、山崎からの妙な忠告を聴いていた為あまり食欲が湧かなかった名前は、只今小腹が空き状態。

高杉に断りを入れ、優しい太陽の下、此処で改めて朝食を取ることに。





「ん〜、おいしい!」


「ククッ…良かったなァ」

「むぐ…っ」


頂いたパンを顔を綻ばせながら食べる名前だったが、高杉の零した笑みと言葉が、何だか子供扱いされているように感じ、頬張るのを一旦止める。



「なんだ、止めたのか」

「だって…。―――あ、そうだ!今回の遠足なんだけど、遊園地なんだって」

「遊園地だァ?」

「うん。なんかね、銀ちゃんが場所決めたとかって…」

「何考えてんだあの天パ……」


突然名前の口から出た遠足報告に、ニヤニヤと笑みを零す担任の顔浮かべた高杉。
その瞬間この上ない程に呆れ、ダラリとその場に仰向けで寝そべった。



「遠足が遊園地とか初めて聞いたな〜私」

「全国探しても無ェよ。ンなバカな学校」

「あはは…そっか」


「ぜってー行かねェ」

「え!?高杉くん行かないの!?」


言いながら深く溜息を吐いた高杉に、名前は声を上げながら彼の顔を覗き込む。

降ってきたその彼女の問いに、高杉は伏せかけた瞼を開き上半身を起こした。



「っ!!」


「クク…何驚いてんだよ」


彼が起きたことにで二人の距離は一気に縮まり、名前は目を見開きながら肩を竦ませる。

少し顔が近くなるだけで敏感に反応してしまう心臓。近頃それを恨めしく思い始めた名前は、「あ、いや……別に…」
と言いながらぎこちなく元の恰好に戻った。






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