01

 裏庭で昼寝をしていたところ、誰かが近くにいるのが気配でわかった。

 足音が近づいてきてぴたりと止まる。そして少し間を置いてからおれのほうに近づいてきて、すぐ間近で再び止まった。視界が暗くなったのでおそらく覗き込まれているのだろう。おれを襲うつもりだろうかと胸を躍らせていると、その影はぬくもりのある何かをおれの上に乗せて立ち去ろうとした。

 慌てて目を開いて起き上がり「おい」と呼び止める。視界に入ったのは生徒で、少なくともおれを襲おうとするような生徒には見えない地味な男だった。うしろ姿だけでそれだけわかるのだから正面を向いたらもっとだろう、と思う。

「あ、は、はいっ……!?」

 大袈裟なくらい声をひっくり返して返事をしたその男は、油の切れた機械のようにぎこちない動きで振り返る。顔は面皰だらけというわけではないから清潔にはしているのだろうが、それでも第一印象がお世辞にも"清潔な男"とは言えなかった。前髪が長いせいかひどい根暗に見える。

 身長は高く肩幅も広いから、きっとアレも大きいのだろう――そう考えて、口許が上がる。いい獲物を見つけた。

 こんな地味な男がおれを目の前にして興奮し雄を丸出しにする姿が見たい。おれの上で腰を振って低く喘ぐその獣のような姿を見たい。いままでに相手にしたことのないタイプだからこそ惹かれるというのが一番かもしれないが、いまおれはこいつに興味がある。

 容姿からして童貞だというのは誰にでも容易に想像できるだろう。童貞だったら初めて覚える快感に夢中になるはずだ。大きなもので身体を貫かれる、そう考えるといまから興奮で勃ちそうだった。

「おまえ、気に入った。たまには味気ないものも食いてぇしな」
「え、あ、……はい?」

 言葉に含めた意味に気づいていないのか口許を歪めて首を傾げる男。童貞という予想は間違っていないか、あるいはこの男が非常に鈍感なのか。どちらでもいいが、とりあえず近くに来いと手を招いた。

 男は戸惑いの様子を見せつつも慌てたように小走りで近づいてくる。さっきおれの身体に乗せられたのはこの男のブレザーだった。タオルも何もかけずに昼寝をしていたから風邪を引くと思ったのだろう。この男は世話焼きなのか、と思ってさらに期待が高まった。世話焼きな童貞男を相手にしたことは、いままで一度もない。

「なんだ、おまえはおれが気に入らないか?」

 煮え切らないような様子の男を見上げながら眉を寄せてみれば、「い、いや、そうじゃなくて」という答えが返ってくる。どうやらおれが気に入らないわけではないらしい。ではなんだ、と思ったところで、この男がおれの言いたいことすら回りくどく言えば理解できなさそうだという結論に至る。

「おれはおまえが気に入った。セックスするぞ」
「…………、……はい?」

 どうやら、はっきりと言っても理解できなかったようだった。





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(C)siwasu 2012.03.21


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