魔王様のにゃんにゃん2



「しおらしいユーリは珍しいな」
「うっ、お、おおお前、だってこれ俺の神経と繋がってるし血は通ってるし言わば体にくっついてんだぞ? こんな感覚初めてだし普通気持ち悪いだろ」
「なら私の角はどうなる」
「生まれつきだからいいじゃねえか。でも俺は嫌なの! ピアスとかタトゥーとか、そういう親からもらった体に後から何かするような類のものは苦手なんだよ。インプラントとか画像見るだけでもおぞましいわ」
「ユーリの苦手なものはよく分からんのう」

 ジークは首を傾げて不思議そうに見てくるが、その間も耳を撫でる手は止まらない。むしろ触られていたのは右耳
だけだったのに、今は左耳まで被害にあっている。
 背筋がぞわぞわして鳥肌が立ってきたぞ、オイ。

「ジーク、いい加減にしろよ。そろそろ怒るぞ」
「うーむ、しかし」
「調子に乗るなっつの!」

 俺は足で顔を蹴りながらくっついてるジークを引き剥がそうとするが、難しい顔で唸りながら耳を触り続けていて全く離す気配がない。
 こいつ、なんで今日に限ってこんなにしつこいんだ。いつもなら俺の嫌なことはしないはずなのに。

「でもユーリが」
「俺がな、っんだよ」

 煮え切らない言い方に若干イラつきながら睨みつけると、ジークは閉じていた目を片方だけ開いて俺と目を合わせる。そしてそのまま視線をゆっくりと下ろした。

「ユーリがそのままなのも、辛そうだと思ったのだ」
「何がそのままなんっ――ぎゃあ! なんで勃ってんだ!」

 ジークにつられて俺も視線を下半身に向ければ、いつの間にか布に立派なテントを張っていた。
 勃起した覚えも理由も分からないが萎える様子はなく、耳を触れられる度に背筋をぞわぞわとした感覚が這ってくる。

「性感帯になっておるのではないか?」
「はあ? 全く気持ち良くないんだぞ、感じてるわけ……ない、筈なんだが。……か、感じてるのか?」
「私に聞かれても困る」

 眉を寄せてジークに問いかけるが同じような顔をされた。確かにそうだ。

「うーん、まあジークの羽も性感帯だし有り得ない話でもないだろうが、少しご都合主義すぎるというか」
「私としては目の前でヨメが勃起しているのだから襲わずにはいられぬというか」
「ふむ、確かにそうだ。……いや、違う!」

 なんだ、今日の俺は頭のネジが一本旅に出たのだろうか。あのジークにまんまと流されている。
 早速俺の同意を得たとばかりに服を剥ぎ取ろうと押し倒すジークを俺は手で制するが、嗜めるように尻尾をやんわりとつかまれて体が大きく飛び跳ねた。

「ふぎゃぎぃっ」
「とても珍妙な鳴き声だな」
「し、ししししし、尻尾をはなせぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 尻尾を引っ張り上げるジークに合わせて俺の腰も浮いてしまう。
 どうやら耳よりも尻尾の方が感じやすいらしい。けれど気持ちいいというよりは耳の穴に指を突っ込まれているような、ぞわぞわして気持ち悪い上にくすぐったいって感じだ。
 ちなみにペニス様はしっかりと反応を示している。

「う、ううう、ユ、ユイス、ユイスを呼んでくれぇ。この際小言も説教も嫌味も我慢するからっ」

 無理だ、ギブアップだ。降参だ。
 このままじゃこんな奇妙なものを付けたままジークとセックスすることになる。

「一通り楽しんでからなら構わぬ」
「さっき呼ぶって言ってたじゃねえか!」
「ユーリが煽るからではないか」
「煽って……ひぃっ」

 しかしジークは完全にその気になっているらしい。まあ元々そういう関係なので普段なら構わないんだ。別にセックスが嫌いってわけでもねえし。
 ただ今は、見た目は可愛いが得体の知れないものが自分にくっついてる状態なので、出来ればこの問題が解決してからゆっくり愛し合うようにどうにか説得を――。

「ふふ、ユーリ」
「な、んだよ」

 珍しく慌てふためく俺が面白いのか、ジークが楽しそうに笑うのでむっとする。

「ユーリは気付いていないようだが、さっきから尻尾が嬉しそうに掴んだ腕を離さぬのだ」

 言われて視線を向ければ、掴んだ手からこぼれた尻尾が腕に絡みついてまるで誘ってるような動きを見せていた。
 なんかいやらしい。

「これはユーリの深層心理なのかもしれぬ」
「いやいやいや、どう考えても別の生き物だろ! 俺そういう気分じゃねえし!」
「しかしここは完全にその気のようだが」

 そう言いながら、ジークは足を持ち上げてあっさり一枚布の服を剥いでしまうと俺の股間を凝視する。
 残念ながら、俺の意思に反してジークに見られているペニスは今にも射精寸前だった。
 物証をおさえられてしまえば言い訳のしようもない。

「ぐう」
「ユーリは自覚がないのかもしれぬが、さっきから耳と尻尾がしたいしたいとせがんでおる」
「多分これはアレだ、なんか別の意思を持った生物が俺に寄生してるんだ」

 と、思いたい。
 そんな心の声もお見通しなのか、ジークは目を細めるだけで俺の言葉を右から左に流すとキスを落としてきた。
 思わず自分から口を開いて誘うように舌を突き出すのは、やはり期待していたのだろうか。

「ん、ふ」

 深い口づけに夢中になっていると耳の裏辺りを撫でられ思わず体が跳ねる。反射的に逃げるがジークの逞しい体が押さえ込むように圧し掛かってきた。腰に手を回されて尻尾の付け根を触れられると背骨に電流が走ったような感覚を覚えて大きく仰け反る。

「んぐっ」

 ジークから離れようとするが、上体を起こして抱きしめるようにがっしりと固定されては動けない。
 深く絡まった舌に尻尾を扱くように触れられる。俺は必死で身を捩るが、体はもう限界だといわんばかりにあっさりと射精した。



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(C)siwasu 2012.03.21


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