「無理しなくていいよ、礼央お兄ちゃん。どうせお兄ちゃんのイタズラに付き合ってるだけでしょ?」 「悪戯じゃねーよ、ちゃんと考えた上で俺はこいつのこと好きって気付いたんだよ」 言い切れば、弟達は顔を青褪めさせて立ち尽くす。 こんなので騙されるとか、やっぱこいつらも小学生なんだな。 「でっ、でもお兄ちゃんはボクたちのお兄ちゃんだし!」 「隼人は君達のお兄ちゃんで、これからは僕の恋人だよ?」 動揺する双子に追い打ちをかける土屋。二人は口をぱくぱくと開閉させて顔を真っ赤に染め上げる。 ニコニコと笑みを浮かべるこいつの内心は今にも襲いたくてムラムラしているのだろう、兄として複雑な心境だ。 流石に言い過ぎだと俺は口を開きかけたが、その前に顎を強い力で掴まれて大きな塊が降ってくる。 「――――ッッッ」 それが土屋の手によるもので、今俺はキスをされているのだと気付いた時には既に唇が離れていた。 呆然としている俺をそのまま抱きしめながら、土屋は二人に向かって挑発的な笑みを浮かべる。 「だからこういうこと、もうお兄ちゃんにしないでね?」 ……格好良く決めているところ申し訳ないが、今すぐ離れたい、突き飛ばしたい、殴りたい。 キスされたことに対してじゃない。抱きしめられて気付いたのだがこいつ、二人を見て勃起してやがる。 何故こんな変態に頼んだのかと若干の後悔を覚えながら、俺はうんざりとした気分で土屋の腕を引き剥がした。そして二人に近付くと俯いてしまった頭に手を乗せる。すると急に肩を震わせた弟達は地面に水を零し始めて――水? 「っおい、泣くんじゃねえよ!」 俺はぼろぼろと涙を零す弟達に慌ててしゃがみ込むと顔を覗き込んだ。 入寮の話をした時も泣いていたが、それはどちらかと言えば癇癪に近いもので、こんな苦しそうに泣く姿を見るのは初めてだ。 どうしていいのか分からず土屋を振り返ったが――だめだ、こいつ完全に悦に浸ってやがる。今すぐ帰ってこの二人をおかずに抜きたくてたまらないって顔だ。 ちなみにマジでそんなことしたら俺はお前の友達やめるからな。つーかペドファイルに加えてSだったのかよお前、救いなさすぎだろ。 「うーん、釘も刺したし僕はここで帰ろうかな」 「悪いな、そうしてくれ」 本当なら土屋がこのまま家まで遊びに来て言いくるめる計画だったのだが、もうその必要はなさそうだ。 手を振って立ち去る土屋に別れを告げると、ちょうど待ち合わせ場所に俺達がいないことを心配したのだろう、母親の車が見えてきた。やばい。 予想通りしゃくりあげて泣く二人に何があったのか問い詰められたが、曖昧な態度で誤魔化していると母親はため息をついて弟達を車の後部座席に詰め込む。車を走らせている間もずっとすすり泣く双子に、何故か母親までもらい泣きをし始めて嗚咽が零れる車内はまるで葬式状態だ。 助手席に座った俺はあまりの居た堪れなさに、やっぱ電車で帰ればよかったと後悔した。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |