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「……」
「…………」


「………………」
「……………………」



「……………………挿れるな」
「待て待てまて待てまてーーー!!」

 シスを押し倒して自身の性器を扱き始めるマオに、必死の制止が入る。マオは、美少年と呼ばれるべきその整った顔を、これでもかと崩して詰め寄った。

「いや、俺じゃん!? 勇者って、つまり俺しかいねえじゃねえか!」
「ちっ、違う! あ、いや、違わなくはないが違う……!」
「何が違えんだよ! 勇者にぶち込まれてぇならむしろ俺に土下座して頼み込む立場だぞ!」
「そういうところだ! そういうところなんだ貴様は!」

 ギャーギャーと喚きたてる二人は、しばらく言い争いをして主張を吐き出しきると、息を整えながら話をまとめた。

「つまり、お前は処女を勇者に捧げると決めていた。んで俺、勇者。じゃあ俺がお前にチンコぶち込んでも、泣きながら感謝するわけだ」
「確かに僕は、もしこの身を捧げることになるのなら、相手は憧れの勇者がいいとは考えていた。だが、過去にこの世界を幾度となく救った優しく勇敢な勇者たちのことを指しているのであって、決してクズで守銭奴で畜生な貴様のことではない!」
「はぁ〜っ? 御託はいいんだよ。人間ってのは、中身じゃなくガワだろ、ガワ。セックスに優しいも勇敢も必要ねえ、いるのは顔とテクとチンコのデカさだっつうの」
「そんな貴様だからこの身を汚したくないと言ってるのだ!」
「あ、てめえ、汚されたくないって言ったな。オイ、俺のチンコは汚れてるって言いたいのか」
「己の欲望と煩悩にまみれた貴様は存在全てが汚れておるわ!」
「その汚れチンコいつもしゃぶってんのは誰だ? お前だよな? じゃあお前の口は汚えもん咥えて飲み込むクソ便所ってところか」
「き、きさま〜〜〜〜ッッッ」

 この二人の間で話がまとまるはずはなかった。

 ついに焦れたマオがシスの両足首を掴んだ。そして持ち上げると、潤滑剤で濡れた双丘の奥へ己の逸物を宛がう。
 腰を進めれば、すぐにカリまで飲み込まれていく。
 シスは上半身を起こすと、それ以上進めぬようマオの体を突っぱねた。

「っ、無理矢理はしないと言っただろう!」
「マジで面倒臭ぇ奴だな。要するに、アソコ濡らせて待ってた相手が思ってたのと違うってだけだろうが。好きなアイドルが理想と違って喚くオンナかよ。ふざけんな、気使って損したわ」
「〜〜っっ、言いたいことは山ほどあるが、僕は女ではない!」
「ああ、そうだったな、すまん…………オナホだったな」
「ぐああぁぁぁぁぁーーーー!!」

 見下しながら鼻で笑うマオに、シスはうめき声をあげた。
 こんなにも激しい憤りを抱いたのは生まれて初めてだ。何故この男はこんなにも人の神経を逆撫でできるのだろうか。
 怒りで沸騰する体にこめかみがひくつく。
 積憤を飲み込めず歯ぎしりするシスを見て、マオは煩わしげな様子で肩を落とした。

「分かったよ。じゃあ俺が優しくて勇敢な勇者サマになれば、お前も尻出してくれるんだよな」
「……有り得ないが、言質としては否定しない。だから早く離れてくれ」
「へいへい」

 その言葉でようやく納得したらしい。
 マオはシスの足首から手を離すと、おもむろに腰を引いた。

「ん……」

 亀頭が徐々に体内から抜けていく。ズルリとした感覚に、シスが背筋を震わせた時だった。

「あ、蚊だ」

 パチンッ!

「はァうッッ!?」

 呑気な声と共にマオが手を叩く。それと同時に、内臓を押し潰されるような圧迫感が、シスを襲った。
 衝撃に息がつまる。視界が弾ける。背が反り返る。
 一体、自分の身に何が起きたのか。はくはくと口を動かしながら考えていると、マオの両手がゆっくりと開かれた。

「あれ、逃したか」
「うあ……っは、ぁ」

 マオが身動ぎすると、下腹部に痺れが走り、シスは腰を震わせる。目線を落とすと、股座から逸物の消えた股間が見える。
 それが消えたわけではなく、自分の中にいるのだと気付いた時、焦りを含んだマオの声が聞こえた。

「やべっ、うっかり入っちまったな」
「な、ぁ、はやっ、く……っ」
「わりぃわりぃ、すぐ抜くから」

 どうやら故意ではなかったようだ。怒るに怒れず、悲しみに泣くタイミングすらなく、シスは複雑な感情を渦巻かせた。

(だが、人の純潔をこうもあっさりと奪ったことは事実だ。後で文句を言ってやる)

 そう決意するも、まずはこの中をぎちぎちと圧迫する逸物を抜くのが先だ。マオも悪気はなかったようで、すぐに腰を引いた。
 逸物がずるぅ、と内壁をめくりながら、ゆっくりと引き抜かれていく。ぞわぞわする感触に背筋を粟立てながら、シスは耐えるように唇を噛みしめていた





 ――のだが。


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(C)siwasu 2012.03.21


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