ヤンキー受け[R18]



テーマアンソロ「ヤンキー哭かす」に寄稿したお話です。
クズヤンキーが大人にレイプされるお話。



「You asked for it.」

 冷たい固い寒い暗いケツが痛い頭が痛いクソったれ、この時期は夜になると急に冷え込むからパーカーを着てくりゃ良かったけど、言い訳するなら俺は今日だるいからさっさと家に帰ってクソして寝る予定だったんだ。こんな暗くて寒くて薄気味悪い所で縛られて転がされる用事なんかなかった。
 カーテンから漏れる音と光からしてどっかのビルの中なんだろうが、電気もついてなくて何も見えやしない。多分殴られたんだろう、脳が揺さぶられたような感覚に吐き気がする。
 舌打ちすると靴音が聞こえて次にドアが開いた。二流のホラー映画でなんかヤバいもんが出てくる時みたいな軋んだ音がゆっくりと部屋に響いてすぐに明かりがつく。眩しくて目を細めながら、鼻につくロンピの香りに歯の汚え先輩を思い出したが、いたのはラフな格好をしてサングラスをかけた如何にも怪しい気怠げな男だった。

「お前がタチバナメグミちゃんか」

 煙草を床に落としながら茶髪の男が俺の名前を確認する。心当たりはないがマズイのとエンカウントしたことだけは分かったので黙って男を睨みつけた。どうやらここはどっかの事務所らしい、古臭いソファーにローテーブルと三つのデスク。この雰囲気は完全にあれだろ、よくテレビで見るヤバい事務所のテンプレじゃねえか。
 男は俺をサングラス越しに冷めた目で見下していたが、返事がないことに呆れたのか溜め息をつくと後ろを振り返った。男の存在が邪魔して見えなかったが、どうやらもう一人いるみたいだ。

「おいミホ、こいつであってんのかあ」
「う、うん……そう」

 ビクビクと肩を縮こませながら出てきたのは俺がよく知る女だった。更に言えば二週間前までは毎日のように会ってたしヤりまくってた女だ。つーか元カノだ。
 それでようやく俺が頭殴られて拉致られてこんな薄汚えところに転がされてる原因が分かった、と同時にカッと頭に血が上る。勢い良く起き上がったつもりだったが縛られていることを忘れていて頭を床にぶつけた。

「おいコラ美穂! てめえどう言うつもりで……ッ」

 男の後ろに隠れている美穂を睨みつけて怒りのまま口を開けば、男がのんびりと近寄ってきて俺の鳩尾に靴先をめり込ませてくる。
 そのまま床を滑るように転がって汚え壁にぶつかれば、追いかけてきた革靴が俺の肩を勢い良く踏み付けてきた。痛みに息が詰まって咳き込んでいると俺の頭を踏み付けながら男が言った。

「お前、うちの妹……孕ませた挙句、トンズラこいたんだってなあ」

 笑っているが全く楽しそうではない、むしろ頬が引き攣っている。なるほど、この男は美穂の兄貴で美穂の兄貴はリアルガチにヤベぇ男だったってことか。
 分が悪い、悪すぎるどころかこれはかなり危険だ。
 今更になって心臓がバクバクと音を立ててドッと汗が吹き出してきた。どう言い訳すればこの場を切り抜けられるか考えていると美穂が近寄ってきて自分の兄貴に縋り付く。

「ね、ねえお兄ちゃん。恵に酷いことしないよね? ちょっと説教するだけって言ってたじゃん」

 こんな彼女孕ませて逃げたクソみてえな俺でも一応美穂にとっては今でも好きな男らしい。
 兄貴と俺を交互に見る馬鹿ヅラを見上げながら今は美穂だけが頼りだと俺は様子を窺った。心の中は片がついたら覚えてろよ、と腸が煮えくり返るほどの怒りでいっぱいだったが、表面にはそんな素振りを出さず被害者ぶった顔して美穂を見上げる。
 だけど美穂の兄貴は自分に縋る美穂を一瞥すると顔をくしゃくしゃに歪ませて顔面を殴りつけた。

「うっっっせえんだよブスが!」

 漫画みてえに吹っ飛んだ美穂はそのままデスクにぶつかって悲鳴をあげる。上に置いてあったんだろう、倒れたペン立てからボールペンやらカッターナイフが美穂の頭上に落ちる。頭を庇ってうずくまる美穂を追いかけて何度も何度も身体を踏みつける兄貴は、さっきまでの気怠そうな雰囲気とはまるで別人だ。
俺は唾を飲んでその様子を見続けた。

「てめえもてめえだよ! こんなクソしょうもねえ田舎のヤンキーつかまえて妊娠してんじゃねえ! 誰が中絶代立て替えてやったと思ってんだ」
「ごめ、ごめんなさっ」

 胸ぐらを掴まれて容赦なく殴られる美穂の顔は徐々に形を変えて赤黒くなっていく。鼻が折れたのか豚のような悲鳴を上げながら血混じりの鼻水を垂らして泣き叫ぶ姿は、さっきまでの俺の怒りを恐怖に変えるには十分で、兄貴が落ち着いた頃には丸くなって嗚咽を漏らしながら潰れた顔をしてる美穂が憐れに思えてしまった。

「人の面に泥塗りやがって……」

 そう言って唾を吐きつける兄貴の言葉にようやく状況が理解できた。これは兄としての報復とか妹の仇とかそういう生易しいものではない、男の面子を踏みにじったことに対する罰なのだ。
 振り返って俺を見る男の顔は優しく笑っていたが、逆にそれが怖くて俺は芋虫のように身体をくねらせて逃げようとする。

「なあ、メグミちゃん」
「ひっ」

 美穂の兄貴はしゃがみこんで俺の上半身を起こすと壁に押し付けて震える俺の肩を数度叩くが、子供をあやす母親みたいな気持ち悪いぐらい優しい仕草に俺は恐怖しか感じなかった。美穂は頭を抱えて丸くなったまま何度もごめんなさいと繰り返しぐずぐずに泣いている。

「分かったか? 俺がお前等の子供殺すための金、出してやったんだわ。ん?」

 そう言って俺の反応を待つ美穂の兄貴。この場合何と言えばいいのか分からなくて俺は目を泳がせて部屋を見渡しながらおそるおそる口を開いた。

「あ、ありがとうございま――」
「いや、返せっつってんだよ」
「へァぶっ、えッ、ぐ……ぐぅ……」

 だが最後まで言い切る前に俺は男に顔面を殴られた。情けない悲鳴が上がる。鼻が折れたんだろうじんじんと痛い。痛ぇんだよクソッタレ。鼻血を垂れ流しながら見上げると無表情の兄貴が何の感情もない目で俺を見ている。
 こいつは相当ヤバい、何キメてんのか知らねえけど俺が今まで会った半端な奴らとは違うホンモノだ。美穂の兄貴は何も言えないでいる俺の髪を掴むと視線を合わせてきて、ニカッと歯を見せながら爽やかな笑顔を作る。それだけで俺の股の間にあるもんは縮こまってそのままションベンをちびりそうだった。

「十万と利子、出せるよなあ?」
「は、はら、払います、ちゃんと払います!」

 俺は千切れそうなぐらい首を縦に振った。途中ゴキって変な音がして首の後ろが痛くなったがそんなことどうでもいいぐらいこの男から開放されたくて必死だった。けれど兄貴は俺の頬を 引っ叩くと更に笑みを深くして手を差し出してくる。

「ほれ」
「……?」
「今、この場で、金を返せって言ってんだ」

 そう言った男の表情は変わらない。こんな場所じゃなきゃ気のいい兄ちゃん程度にしか思わなかっただろうが、今はどう見ても持ち歩いていない額の金をここで返せと脅してくるキチガイ野郎だ。俺は青褪めながら何度も首を横に振る。

「い、いや、今は持ってなっ……で、でも、ちゃんと払います! 約束しまッ」

 言い終わる前に俺の頬に強い張り手をかまされた。何も言えず固まっていると張り手がパンッパンッと乾いた音を立てて俺の頬を往復した。口の中が切れて本当なら鉄の味がするはずなのに恐怖で舌の感覚も分からなくなっている。ゆっくりと目だけを美穂の兄貴に向けると、さっきまでの笑顔はどこに行ったのか無表情で俺を見下ろしながら小さく舌打ちしていた。

「妊娠したって言われて逃げた男の言葉、信じられるとでも思ってんのかよ」

 確かにその通りだ、今の俺が信用できないのは当然だろう。
けどそんな大金財布に入ってるわけでもないしじゃあどうすればいいんだよ。
 困りながら見上げていると美穂の兄貴は息を吐いて俺の肩に手を置きながら首を傾げた。呆れたように眉を下げているが目だけはギラついているのが気持ち悪くて大きく唾を飲む。美穂の兄貴は暫く無言で俺を見つめていたが頬を緩ませて口を開いた。

「だから、な? 脱げよ」
「……は?」

 思わず出た返事にまた張り手が頬に飛んでくる。叩かれて顔が横を向いたまま今言われた言葉を理解しようと脳をグルグル回していたら焦れた兄貴が前髪を掴んで引っ張ってきた。

「は? じゃねーよ、脱いでケツこっち向けろっつってんだ」

 兄貴の顔が醜く歪んでまた元の胡散臭い笑みに戻る。

「俺ぁ優しい兄ちゃんだからな、美穂の惚れた男ならゲイビ撮るぐらいで済ませてやるよ」
「は、はぁ!? んな話聞けるわけ」

 信じられない言葉に思わず反論したら、また口答えするなと言わんばかりに容赦なく頬を叩かれた。兄貴の方に視線だけ向けると冗談を言ってるような雰囲気ではない。この頭のヤバい男は妹を孕ませてトンズラこいた罰としてケツを差し出せと言ってるのだ。
 普通ならネタだろって笑い話で済むが、この空間と状況と目の前の男がそうでないことを物語っている。

「聞ける聞けないじゃねえよ、聞けって言ってんだ。大体てめえみたいなションベン臭えガキに十万以上の価値があると思ってんのか? それをこれで許してやるっつってんだからこれ以上いい話はねえだろ」

 嫌だとは言えない、言わせてくれない。言ったとしてもまだケツ掘られた方がマシだって思うぐらいのことをされるに違いない。
 だからってホモになれって言われて分かりましたと頷けるわけがない。どうしようもない状況に震えていると手を振り上げてきたので、俺はまた張り手が飛んで来ると思って身構えながら反射的に頷いてしまった。兄貴はそれを見て満足そうに笑みを浮かべながら手を下ろすと扉の方に向かっておい、と大きな声で叫ぶ。
 するとギィと嫌な音を立てながらガタイのいい短髪のおっさんと細身の小綺麗な男が入ってきた。多分入り口で待機してたんだろう、ガタイがいい方はカメラを持っていて最初からそのつもりだったことが分かり思わず頬が引きつる。
 小綺麗な男の方はポケットに手を突っ込んで大人しそうにしているが俺のことをジッと見つめてきて気味が悪かった。とは言え、この二人のどっちかに掘られるならまだ細い方がマシだと思って俺はなんとなく小綺麗な方を見つめ返す。

「美穂に種付けしたんだろ? 次はお前が種付けされてガキ堕ろした金作んだよ。……おい亀井、カメラ置け」

 美穂の兄貴がそう言って俺の髪を引っ張ると古臭いソファーに転がして縛っていたビニール紐を切った。ようやく両手両足が自由になってこのまま逃げ出せるんじゃないだろうかと体を動かしてみたが、ずっと同じ体勢でいたせいかバキバキに固まっていてすぐ走り出せそうにはない。
 そうこうしてるうちに亀井と呼ばれたガタイのいいおっさんが俺の前にカメラと、それを固定するカメラ立てみたいなもんを置いて角度を弄りだした。
 ヤベぇ、マジでヤベぇ。俺を掘るのはこのデカいおっさんかよ。細い方はどこに行ったんだと後ろを見たら美穂の背中をさすりながら心配そうに体を起こしてやっていた。そうだ、美穂だ。この場でまだ俺を助けてくれそうな奴はあいつしかいない。
 そう思って声をかけようとしたが美穂は受け取ったタオルで鼻血を拭いて俺を見ると、顔をくしゃくしゃに歪ませながら叫んだ。

「ふざけんな、ふざけんなよ、子供デキたって言ったら逃げやがって! おかげで堕ろした時麻酔切れてねーのに無理矢理立たされて頭グルグルして吐きそうでしんどくてむちゃくちゃグロッキーだったのに誰も心配してくれないし、お兄ちゃんには鼻折られるし本当最悪だよクズ! どうすんのこの鼻ほっんとあり得ない! 死ね! ついでに整形代もその汚えケツで払ってから死ね!」

 そう言い切ると、美穂は子供みたいに泣きじゃくって小綺麗な男の手を振り払い「ごめんなさいごめんなさいお兄ちゃんごめんなさい」と言いながら一人で部屋を出ていった。
 子供を殺したことよりも自分の鼻の方が大事なあたり流石クズの彼女って感じするよ、お前。俺は美穂の背中を思わず呆れた顔で見送ってしまうが亀井のおっさんの準備が整ったらしい声でまた部屋に元のヤバい空気が戻ってくる。首を戻すとカメラと美穂の兄貴と亀井のおっさんといつの間にか移動してた小綺麗な男が俺を見つめていた。

「ひ、ひ……」
「ほら、さっさと扱けよ」

 兄貴はそう言うと美穂の出ていった扉をチラッと見て溜め息を吐きながらデスクに移動する。そして椅子に座りながらのんびり煙草を吸い始めた。
 動けないで足をもぞもぞ動かしていると、デスクを蹴る強い音が聞こえてくる。見れば兄貴が明らかにイライラしてて、俺は慌ててベルトを引き抜くとチャックを下ろしてボクサーパンツの間からチンコを取り出した。
 こんな状況で勃つ筈ないが、勃たなければ何をされるか分からない。とりあえず震える手で扱くだけ扱いてみたが、やっぱり俺のチンコはうんともすんとも言わなかった。焦って無理矢理扱いてると、だんだん痛くなってきた。チンコは全く変わらないどころか余計に小さくなってる気がする。

「う、うぅ」

 項垂れながらうめいていると、美穂の兄貴は俺の前に来て股間を見ながら呆れたように大きな溜め息をついた。

「……勃たねえな。おい、クスリ持って来い」

 その言葉を聞いて小綺麗な男が錠剤とペットボトルの水を持ってくる。受け取った兄貴はしゃがみ込むと俺の顔を覗き込みながらペットボトルで頬を軽く叩いてきた。

「突いた方が面白えけど初めてじゃ勃たねえからな、これ飲め」

 そう軽く笑いながら差し出された青い錠剤が頭痛薬とか風邪薬じゃないことぐらい分かる。まさかヤバいやつじゃねえよな。見たことない形と色に怖くなって俺は美穂の兄貴を見つめ返した。

「これ」
「精力剤みてえなもんだよ、お前だってさっさと終わらせたいだろ」

 女を口説く時のような猫撫で声が余計に怖いが逆らうわけにもいかない。俺はチンコを触ってた手で錠剤と水を受け取ると大きく深呼吸してから一気にそれを呑み込んだ。
 緊張してて分からなかったがどうやら喉が乾いてたらしい。そのまま水を一気飲みしたらむせてしまう。それを冷めた表情で見ていた兄貴は俺がクスリを飲んだのを確認すると立ち上がってまたデスクの椅子に腰を落としスマホを弄りだした。
 クスリを飲んだはいいが特に変わった様子もなくこっからどうしていいか分からない俺は視線で兄貴を追っていたが、カメラ越しに俺を見ていた亀井のおっさんが無言で手を上げてきたので、またチンコを扱き始めることにした。
 勃たねえから止めた、なんてことになってくれたらラッキーだがこのまま無理矢理ケツに突っ込まれんのも嫌だ。いきなりホモセックスするとケツが締まらなくなってクソ垂れ流し状態でめちゃくちゃヤベぇってどっかで聞いたことがある。まだ十七なのに残りの人生クソ漏らして生きるのだけはごめんだ。突っ込まれるのにチンコ扱く理由はよく分かんねえけど、多分AVで女がオナニーから始めるのと同じ理屈なんだろう。
 そんなことを考えながらヤケクソで弄り続けていると、だんだんチンコがかたくなってくる。気付けば俺の意志とは関係なく勃起していて、不思議に思っているとカメラを覗いていた亀井のおっさんが頷いて横の小奇麗な男に目配せした。
 ずっと突っ立ったままニヤニヤ笑ってこちらを見ていた男はそこでようやく動き出すと、俺に近付いてベルトを緩めだす。カメラも場所を移動して俺達の横にくる。ガタガタと物音が響く中、俺はアホ面で二人が動くのを見ていたが、ようやくチンコを出してきた小奇麗な男が相手なのだと気付いて体を仰け反らせた。

「ひ、ひっ」
「何ビビってんだ、さっさとそれしゃぶるんだよ」

 後ろから眼前に出されたチンコをしゃぶれという声が飛んできて振り返ると、美穂の兄貴はまた新しい煙草に火を付けてスマホを弄っていた。聞こえてくる音と指の動きからパズル系のゲームをやってるらしい。上手くいかないのか機嫌悪そうに舌打ちしてる姿を見てゾッとする。
 俺にとってこの状況はすごくヤバくて有り得なくて異常だってのに、こいつには普通のことでいつものことで正常なのだ。
 目の前で半勃ちのチンコを揺らしてくる男は相変わらずニヤニヤと俺を見下ろしていて、いっそ噛み切ってやろうかとも思ったが、代わりにカメラを持ってる亀井のおっさんが相手になるのはもっと嫌なので頬を引き攣らせながら舌を出してチンコに近付いた。
 出してきた時から思っていたが、臭い。腐った魚のような長いこと放置した排水口のような洗ってない雑巾のような湿っぽくて吐き気がこみ上げてくるような臭いが鼻から口から入ってくる。
 思わずえずくが、こういうのは一気にやってしまった方が気にならないだろうと思って勢い良くチンコに食いついた。勢いが良すぎて歯が当たったのか男は体を揺らしたがすぐに腰をぐいぐいと押し付けてチンコを根本まで俺の口に突っ込む。頬を軽く叩いてくるのは多分舐めろってことなんだろう、口の中いっぱいになったチンコに舌を這わせるとビクビクと動いて膨張していくのがキモい。

「馬鹿か、しゃぶりながら自分のも扱くんだよ」

 さっさと終わらせたくて必死に口を動かしてたら後ろからそんな声が聞こえてきた。まだ機嫌が悪いのか苛立った声に俺は慌てて自分のチンコを触る。気持ち悪くてゲロ吐きそうなのに、それでもクスリのせいなのか勃起したままのチンコを扱いていると段々冷静になってきて、横目に俺達を撮るカメラを確認しながら一体自分は何をやってんだと情けなくなってきた。
 彼女に赤ちゃんデキたかもなんて言われたら誰だって逃げる。まだ高校生だしちょっと盛り上がってゴム付け忘れたぐらいでんなことになると思ってなかったし、何なら美穂は生の方が気持ちいいっていつもより締まりが良くてノリノリだった。あいつも確かに殴られて痛い目見たのかもしれないが、俺がされていることに比べたら割に合わねえだろ。
 くそっ、なんで、なんで俺が男のチンコしゃぶってるとこ撮られながらチンコ勃起させてなきゃいけねえんだよ、気色悪ぃ。
 んなこと考えてると小奇麗な男はなんかイクイクってきしょい声出しながら俺の口ん中で射精した。それでようやくチンコが離れていって、代わりに残った精子のツンとした生臭さにようやく自分がレイプされてるってことに気付いたらもうダメだった。ヤバい、ムリ、目の奥が熱い。

「お前なあ、泣いてんじゃねえよ」

 二人が躊躇したことで気付いたのか、美穂の兄貴が回り込んで覗いてくる。そして俺を見て呆れたように溜め息を吐くと言った。

「フェラしたぐらいで泣きべそかくのかよ」
「っ」

 小馬鹿にしたような物言いにカッとなる。さっきから頭に血がのぼってガンガン響くような痛みに苛立ちも感じていて、元々短気な性格の俺は顔をあげると立ち上がって衝動のままに掴みかかった。

「ふっざけんなよ! 妹孕ませたぐらいでキレてんなよ、てめぇに関係ないだろホモビとか何だよきしょいんだよ!」

 叫びながら殴りかかろうと右手を振り上げたが、ズボンが半分ずり落ちてたことを忘れていた。足がもつれこけそうになった隙に美穂の兄貴は俺を突き飛ばす。またソファーに転がされた俺はすぐに起き上がろうとしたが、それよりも早く俺の腹の上に乗った兄貴が思いっきり顔面に拳を振り落としてきた。

「ぐぎゃっ」

 美穂の時みたいに何回か顔を殴られたが、腕でなんとかガードすると攻撃が止まった。腕の隙間から兄貴を覗き見ると、氷のように冷たい目がこちらを見下ろしている。

「斎藤、こいつ押さえとけ。亀井、アレ持って来い」

 その言葉に細身の男が俺の体を押さえつけてきて、こいつが斎藤って名前なのだと知る。体格の割に意外と力のある斎藤は俺がむちゃくちゃに暴れてもびくともしなくて、その間に美穂の兄貴は亀井のおっさんから手のひらサイズの何かを受け取っていた。
 一瞬注射器のように見えてチキったがどうやらそれはホッチキスで、何に使うんだと思った瞬間、左手を掴まれてそのままホッチキスを人差し指の爪の間に――。

「ぎあぁぁァぁぁァッ!」

 有り得ない痛みに喉からシャウトみてぇな叫び声が出る。でもその悲鳴をあげてる間に美穂の兄貴が今度は中指の爪にホッチキスを押し当ててきた。暴れて逃げようとしたが、そのせいで甘皮のところに針が刺さってさっきよりも鋭い痛みが脳みそにぶち込まれる。
 いてぇ、いてぇ、そんだけが頭の中グルグル回って無我夢中で体を動かすけど、亀井のおっさんが俺の腕をソファーの背もたれに押し付けた。美穂の兄貴は動きが制限された俺の手を取って丁寧に一本ずつ爪の間にホッチキスを押し当てていく。
 タマがひゅっと縮んだ気がした。



   ◆◇◆



「ひぎっ、ひ、ぐぇぇ……」

 左手の指が全部終わった頃にはもう暴れるどころか抵抗も反抗も忘れていて、メグミちゃんは鼻水垂らしてガキのように泣いていた。本当なら失禁してもおかしくないのだが、勃起したままのチンコがそれを許してくれないんだろう、針を刺されて体を痙攣させる度にチンコも一緒にぶらぶら揺れて面白かったから苛ついていた心も少しスッキリした。

「くそ……くそが、死ね……死ねッ」

 まだ悪態をつく気力があるのかと思えばどうやらそうではないらしい。いてぇいてぇと左手を握り込んで泣くメグミちゃんは、俺がホッチキスを股間でおっ勃ててるチンコに当ててみせると歯をガチガチと鳴らして見上げてきた。

「どうなんだ、やりたくねえのか、やりてぇのか。やりたくねえってならこのまま体中に針ぶち込むプレイってのも需要がねぇわけじゃねーんだわ」

 冷めた視線を向けるとメグミちゃんはひゅっと喉を鳴らして首を勢い良く縦に振った。

「や、ひます、やります、やらせてくらさい」
「ならグチグチ言ってんじゃあねぇよ」

 俺は溜め息を吐きながら体を伸ばしてメグミちゃんから離れると、椅子に戻ってスマホでさっきまでやってた流行りのパズルゲームを再開する。

「おい斎藤、腹減ってきたからさっさと終わらせろ」

 画面から目を離さず言えば、斎藤の気の抜けた返事が聞こえてきて次にメグミちゃんの悲鳴が上がった。おそらく簡単に慣らしただけでもう突っ込み始めてるんだろう。野太い声は何度聞いても吐き気がする。
 正直妹を孕ませたってのはどうでも良かった。ただ仕込むだけ仕込んでトンズラこいたってのが地元でちょっとイキっているヤンキーだと聞いて、腹の中が掻き回されたような怒りが収まりつかなかったのだ。
 画面の中でまたゲームオーバーの文字が現れて舌打ちする。ソファーを見ればオットセイみたいな鳴き声を上げながら泣きじゃくってケツを掘られてるメグミちゃんの姿があった。バックで強引に腰を打ち付けられて肘掛けにしがみつきながらもがいている。
 バイアグラのせいで未だ勃起してるチンコからは我慢汁がもれていた。あまりにも醜い喘ぎ声だったからこっちに視線を向けてきた亀井に顎をしゃくれば、それだけで理解した亀井は肩をすくめて固定カメラの位置を確認するとメグミちゃんに近寄って自分のチンコを口に押し込み始める。噛まれないように鼻をつままれて息が出来ないメグミちゃんはふごふごと言いながら喉チンコも犯されていた。
 ようやく気色悪い声が消えて俺は気分転換に煙草に火を点ける。そしてまたスマホに視線を戻すとメッセージが届いていたので、反射的に起動させて既読状態にしてしまったことを後悔した。

「くそ」

 仕方なくメッセージの相手に電話すると、コール音が鳴る前にもしもしと聞こえて思わずこめかみを押さえる。

「今忙しーんだよ、夜そっち寄る予定だから話しならその時に」
『斎藤連れてって何が忙しいだよ、どうせまた前の事務所でヤンキー虐めでもしてんだろ』

 相手の馬鹿にしたような物言いに頬が引き攣るがその通りなので何も言えずにいると、電話の向こうで溜め息と共に説教が始まった。付き合いが長いせいでお節介な数少ない友人とはいえ小言がうざかったので、会話の途中で通話を切ると立ち上がってメグミちゃんの様子を見に行く。
 丁度終わりかけなのか、斎藤が「あー、イきそ、イく」とか気持ち悪い声を出しながら中で射精していた。
 どうやら生でやってたらしい、チンコを抜くとおミソがついてて斎藤があからさまに顔を顰める。

「げ、こいつ漏らしてるし」

 ケツから垂れ落ちてソファーに出来る茶色い染みに俺は思わず鼻を摘む。メグミちゃんを見ると涎やら精子やら鼻水やら涙やらで顔面ぐしょぐしょにさせながら半開きの口で呆けていた。
 あー、これはもうダメなやつだな。俺はサングラスを外して薄目でメグミちゃんを見下ろす。すると視線を向けてきたメグミちゃんは、目を見開いてぐしゃぐしゃな顔のまま馬鹿にするように笑って俺を見上げた。

「てめぇの方がよっぽどそういう顔してんじゃねえか、きめぇんだよオカマ野――」

 悲しいことに、言い終わる前にメグミちゃんは鼻を折って悲鳴を上げていた。俺が殴ったからだ。
 そのまま何発か顔を殴って、それだけじゃ気が済まなかったのでデスクの引き出しからペンチを持ってきて歯を何本か引き抜いたらメグミちゃんは気を失ったので、俺はようやくそこで一息つく。
 するとカメラを片付け終わった亀井がテキパキとメグミちゃんに衣類を着せてまたビニール紐で縛り始めた。俺はメグミちゃんのポケットからスマホを取り出して、あらかじめ美穂から聞いていた連絡先にメッセージを送る。それがちゃんと受信されたことを確認してまたポケットにスマホをねじ込んだ。出演者にはちゃんと出来上がった中身の確認をさせてやらねえと可哀想だからな。
 外に出ると廊下で美穂が座りながら静かに泣いていた。俺の顔を見ると何か言いたそうにしていたが、舌打ちで返すと美穂は心配そうに近寄ってきた斎藤に抱きついてまた泣いていた。 股のゆるいこの女のことだ、次は斎藤相手に腰を振ってるんだろう。
 俺は斎藤が病気持ちでクズでそっちの界隈からはあぶられてる男だってことはいちいち教えてやる必要もないと、抱き合ってる二人を白けた視線で見つめていた。

「じゃあ俺、美穂ちゃん送っていきますね」

 どこに、などと聞くのも馬鹿らしい。ニヤつく斎藤に手を振って見送ると、メグミちゃんを抱えた亀井とハイエースに乗り込む。

「そこらへんの公園のベンチで寝かせてやりゃあいいだろ」

 助手席に乗って指示を待つ亀井にそう言うと、車は三十分ほど走って住宅街に見つけた小さな公園で止まった。まだ目が覚めないメグミちゃんを汚いベンチに転がしてビニール紐を切る。
 先客の汚いおっさんがこちらを見ながら隅で缶を潰していたが、メグミちゃんの財布を投げつけると中身を抜いてそそくさと去っていく。

「じゃあな、メグミちゃん。また会おうや」

 ベンチで気絶してるんだか疲れて寝こけているのか分からないメグミちゃんの頬を叩いて俺はその場を後にした。



   ◆◇◆



 冷たい固い寒い暗いケツが痛い頭が痛いクソったれ、この時期は夜になると急に冷え込むからパーカーを着てくりゃ良かったけど言い訳するなら俺は今日だるいからさっさと家に帰ってクソして寝る予定だったんだ。こんな暗くて寒くてきたねぇ公園で転がされる用事なんかなかった。
 ジンジンと疼くケツ、ヒリヒリと痺れる指先、ズキズキと痛む顔面。
 夢じゃなかったと気づいた時には悲しいやら悔しいやら怖いやらで震えながら泣いていて、泣き尽くして落ち着いた頃に自分が今いる場所を確認しようとスマホをつけて固まった。美穂から逃げる時に連絡先を変えなかったことを悔やむが、多分あいつらのことだ、住所も割れてるんだろう。考えてみれば、あの時美穂の兄貴は「一回で十万」なんて話はしていない。
 自業自得。
 最後にそう書かれたメッセージに俺はその通りだと思わず笑って頭を抱えた。



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(C)siwasu 2012.03.21


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