ガチムチ襲い受[R18]



ファンから友人に昇格した攻め×童貞拗らせすぎて処女喪失に走る受け。



【リザルトの顛末】

 松原(まつばら)はそれなりの自由を生きていたと思う。夢中になったそれに人生を費やして、生きて―――楽しかったか、と聞かれれば自信を持った笑みで是と答えることが出来た。
 けれど昨年身体を負傷し、引退を余儀なくされ、気付く。自分の手の中には何も、何も残されていないのだと。
 松原自身何故そう考えたのかは分からない。怠惰に生きる一年が脳を、思考を狂わせたのかもしれない。

「ちょ…っ、松原さん!?」

 それでも、ここまで行動してしまった以上、今更引き返すことも出来なかった。

「あ、あの、どういう状況でしょうか、これ…」

 後ろ手に縛られた稲瀬(いなせ)がベッドの上で引き攣った笑みを浮かべる。
 マウントポジションをとられ身動きが取れない彼は、魚のように何度か跳ねた。しかしそれも無駄だと悟ると溜め息を吐いて困ったように松原を見上げる。
 稲瀬は飲み屋で知り合ったサラリーマンだ。まだ知名度が低かった松原の、正確には後に悪役プロレスラーとして名を馳せるエル・ド・タイガーのファンとして意気投合し、十年以上の付き合いを続けてきた。
 プライベートで一番気心のしれた友人である稲瀬の上で、松原は眉間に皺を寄せその険しい表情を強くする。

「…悪ぃ」

 松原は小さく呟いて、サイドボードに置かれた布で稲瀬の視界を閉ざした。
 彼はビクリと身体を揺らしたが、それ以上の抵抗は見せなかった。

「頭ん中で女…好きな、AV女優…とかいんなら、それ…想像してて、くれ」

 その言葉に意図を察したのだろう。稲瀬は松原の巨体が腹に乗っている為苦しいのか、掠れるような声をあげた。

「松原さん…ゲイ、…だったんす、か…?」
「違う」

 ならこの現状について理由を求められるかもしれない。
 けれど、稲瀬との付き合いが恋心という邪推な理由で続いていたなどと誤解されたくはなかった。

 松原は幼い頃からプロレスが好きで、プロレスに恋をしていた、と言っても過言ではなかった。
 両親の反対を押し切り高校卒業と同時に上京し、憧れていたプロレス団体に入団出来た時は天にも昇るような気持ちだったことを思い出す。練習生として努力を重ね、デビュー戦でスポットライトを浴びた時の感動も燻る胸の奥に残っている。
 悪役レスラーとして名を馳せ、三年前右腕が故障した時でもそれをパフォーマンスの一つとして続けてきた。
 けれど、左足も動かなくなった今。
 プロレスラーとしての生命は断たれ、見栄を張ってメディア露出も拒んでいた自分が悔やまれる。
 今の松原はただ足を引きずり歩く大柄な中年男性でしかなかった。

「…っ」

 松原は稲瀬のベルトを外し、下着ごと乱暴に衣類を脱がせる。
 外気にさらされたせいか緊張した肉体は固まっていて、一瞬の罪悪感を覚えた。
 けれど今更謝って元通りになるには進み過ぎていて、また松原自身稲瀬との関係を断ちたいと―――レスラーとしての松原に憧れを抱いていた稲瀬の気持ちから逃げたいと、考えていた。

「ま、つば…ら、さん…」

 震える声に呼応するように萎える陰茎を掴み優しく包む。円を描いた無骨な指の間から覗くそれをゆっくりと上下に扱いた。
 なるべく恐怖心を与えないようにと腰を撫で、腿を摩り緊張感を解していく。
 徐々にかさを増したそれにホッと一息ついて、松原はゆっくりと顔を近付けると昨日見た映像の中、女優がする愛撫を思い出して舌を這わせ、口に含んだ。
 僅かに稲瀬が反応を示して、それに気を配りながらカリを唇で摩擦する。

「っぅ、」

 松原は、童貞だった。
 幼い頃からプロレスに恋をし、プロレスに生きてきた彼は幾度か女性と付き合いがあったものの行為を及ぶことなく、一ヶ月と保たず別れてばかりだった。
 それを悔いたことはない。むしろ、オフは稲瀬と飲みに行ったり仲間達と馬鹿騒ぎしている方が楽しかった。
 けれど輝いていた頃の自分を失った今、残るは虚無感ばかりが背中を這い動く。
 自棄か、と聞かれればそれもあると頷ける。ならば何故この方法を選んだのだろうと空いている手で扱いていた自分の、大きさこそ変わらないが稲瀬のような凹凸のない、筒状の布に包まれた陰茎を見つめて自嘲した。

(こんなもの、見せられる訳がない)

 松原は稲瀬の怒張した陰茎を口に含み上下に動かしながら左手で自分のものを扱きあげ、右手でサイドボードの―――。

「…っぁ、え…?」

 荒い呼吸を繰り返す稲瀬が、自身の肌にかかった温めの液体の感触に身をよじった。
 それを丹念に塗り込まれ、松原の動く気配に稲瀬はごくりと唾を飲み、喉を動かす。
 ギシリ、と動くスプリングが松原の体重を支える膝を受け止め、沈む。緊張しているのか僅かに震える振動が脇腹に伝わった。
 そして稲瀬の上で動く松原は苦しそうな声と共に何かを引きずり出すような音を稲瀬の上で洩らし、次に彼に与えられた感覚は、

「っ…、…あ………ぇ、…え…?」
「ふっ、…ぅ、ふ、は…っ」
「っあ、え、ちょ、ちょっ、と…松原さん!?」

 目の見えない稲瀬は自分の腹上で何が起こっているのか理解出来ずにいた。
 けれど確かに陰茎から感じる圧迫感と、熱。
 信じられない、という気持ちと実際起こっている現実を比べながら稲瀬は身動きをしたが、やはりしっかりと縛られ、圧し掛かった重みは彼の肩を揺らすだけで終わった。
 その間にも稲瀬の亀頭に感じた熱は徐々に陰茎全体を包み込み、同時にその周囲に重みと肌が―――松原の垂れた睾丸の皮が、自身の肌にひたりと当たるのが感じられる。

「ま、松原さん…何、やってん、ですか」

 それに松原は舌打ちだけで返事をしなかった。声を出せば今彼の腹上にいるのは自分だと聴覚で認識せざるを得ない状況となってしまうだろう。
 無言のまま、なるべく声を上げないように松原は息を吐きながら自身の肛門に埋め込まれた稲瀬の陰茎を大臀筋に力を加えた。低く呻く声と同時に萎える気配のない陰茎に心中で安堵の息を洩らしながら、松原はゆっくりと腰を浮かせ、稲瀬の腰横に手をつくと上下に動きを開始する。
 事前に拡張され、専用のローションで濡らされた肛門はスムーズに陰茎を扱き上げながら、その摩擦で稲瀬に快楽を与える。
 実際に体験してみると、予想以上の圧迫感に松原は荒い呼吸を繰り返しながら、それでも稲瀬の反応を伺って動きと筋肉の使い方を試行し、彼を少しでも楽しませようと努力していた。

「ま、つばらさ…っ松っばら、さん…!」

 そんな松原の考えなど無視するかのように稲瀬は泣きそうな声で何度も名前を呼ぶ。松原はそれにまた舌打ちをして、一度動きを止め考えてからなるべく低い声を上げぬよう、囁くような声で返事した。

「何だ…」
「お願いです、う、腕…外してください…っ」

 彼の懇願は切実そうな音色を含めていて、しかし松原にとっては息を呑むような要求だった。

「む、りだ」
「て…、抵抗しません…っ暴れません!」
「無理だ」

 松原はもう一度、はっきりとした口調でそう返し、彼の肩を見た。
 無理に回した筋肉と圧し掛かる二人分の体重のせいか二の腕が少し青くなっている。少しの罪悪感を感じながら、せめてと自身の体を中腰に浮かせれば稲瀬から違うんです、とまた泣きそうな声が上がった。

「目…っ、そ、そう、目隠しも取りません!」
「早く終わらせるから」
「そうじゃなくて!」

 お願いします、と何度も続ける稲瀬に、松原は溜息を吐いた。彼を見るに確かに抵抗を見せる様子はない。けれど目を覆っている布だけは外されたくないと、自身の陰茎を見られたくないとそれだけは守りたかった松原は、迷い、彼の視界を遮る布が湿ってきた所で諦めた。

「絶対…目隠し、外すんじゃねーぞ」

 脅しを聞かせるように低い声音で大臀筋に力を入れながら、こくこくと何度も頷く稲瀬の背中に手を伸ばし彼の腕の拘束を解く。

「あ…っつぅ、」

 背中に固定されていた腕は凝っていたらしい。数十分ぶりの開放感に稲瀬は嬉しそうに何度か両腕を回した。
 その様子を松原は眉間に皺を寄せながら睨み付けて、彼を早急に射精させようと、行為を終わらせようと腰を落とし、力を入れる。しかしその動きを邪魔するように、稲瀬は松原の腰を撫で、掴んだ。

「っお、おい、稲、せ…、っ!」

 松原はその手が自身の陰茎に伸びる恐れを抱いて、慌てながら彼の手を振り払おうとその腕を掴む。しかし、それよりも早く両手に力を入れた稲瀬はその腰を引き寄せ、自身の腰を上げて松原の中に陰茎を深く突き刺した。
 今まで以上の圧迫感に松原は喉から絞り出るような悲鳴が洩れる。その瞬間体勢を崩し、倒れこみそうになる自身の体は稲瀬の両脇のシーツに肘をつくことによって防いだ。前のめりになり臀部が露になった所を、稲瀬は腕を伸ばし嬉しそうに擦る。

「…っ、ぁ!」
「あー…、やば…や、ばい…これ、夢じゃないっすよね?松原さん、これ、夢じゃないっすよね?」

 言いながら臀部をがっしりと掴み激しく腰を揺する稲瀬に、松原は驚愕と動揺が入り混じった感情のまま彼の顔を伺った。緩む口元からは喜びの表現しか見えず、困惑のまま彼の激しい律動に流されまいと息を吐く。

「はーっ、はっ、はっ、あ、ぐ…っ」
「ははっ、はっ…やばい、やべぇ…どうしよう、っ松原さん」

 彼の独り言にも似た呼吸の合間の呟きは松原の耳に届いてはいたが、益々激しくなる腰の動きについていくのが精一杯でろくな返事も出来ないまま喉から呻きを洩らした。
 その間にも稲瀬は松原の臀部を愛しそうに撫で回し、時折接合部分に指を入れたりと弄びつくした後は流れに沿うようにゆっくりと腰と脇腹を伝い、その手は松原の顔に到達するとまるで確認するように何度も皮膚の上を滑らせる。

「この、むっしりした肌とか、ちょっと落ちた筋肉とか…頬骨のごつごつした感じ…あぁ、顎鬚伸びてきてる…ふふっ、松原さん、…松原さんだ」

 稲瀬は子供のように笑いながら彼の体を撫で回し、両頬を掴んで自身の顔に近付けると引退してから伸ばしていた顎鬚を口に含んだ。
 そして一通り満足すると、松原の肩を押して上体を上げさせる。松原は自身が何をされているのか理解できないまま、ただ彼が何度も奥へと突き上げてくるその衝動に揺さぶられながら為すがままに動いていた。

「な、なん…っうあ!」
「あれ?乳首…あぁ、筋肉で…ここか」

 稲瀬は腰を回し相手に落ち着きを与えぬまま起き上がった松原の胸筋に指を這わせる。どうやら乳頭を探していたらしい稲瀬は本来あるであろう場所を撫で、少し首を傾げてからゆっくりとその指を外側へと這わせた。
 鍛えた筋肉により一度膨らみ、そして落ちた脂肪のついた胸は、乳頭の位置を通常よりも外側へ、そして下側へと追いやっている。目隠しをされたまま探るように指を動かしていた稲瀬は、暫くして突起の感触に当たり口元を綻ばせてそれを容赦なく摘みあげた。

「っつぅ、あ、い、稲瀬…っ」
「引退してから全然鍛えてないからすっかり皮が伸びちゃってますね、松原さん」
「っ、い、痛い…っ」
「大丈夫大丈夫」

 何が大丈夫なのか、と怒鳴りつけたかった松原はしかし稲瀬のぐ、と押し込められた陰茎が自身の内臓に当たる衝撃に喉を詰まらせる。

「あぁ、…ああ…ずっと、ずっと松原さんとセックスしたいって…すげー、思ってたんです」

 稲瀬はそう零して、自身の状態も起こすと自分よりも大きい松原の広い背中に腕を回して強く抱きしめた。
 松原はその発言にがん、と頭を揺さぶられるような打撃を覚えてそれでも慣れてきた彼が松原の陰茎に伸ばそうとする手を必死に食い止める。
 結局目隠しは外されることなく、また松原の陰茎を彼に知られることなく行為は終え、お互いに残る疑問だけが尾を引いた。





「にしても松原さん、生は駄目っすよ生は。ゴムつけないと」
「っ!……お前には…嫌な思いを、させるからせめても、と…ちゃんと、中は洗った」
「いや、うん、凄い嬉しかったってか俺得ですけど…もしこれで俺がビョーキ持ちだったら松原さん一発でアウトっすよ。挿れる方と違って挿れられる方は後で処理出来ないから」
「っそ、…そう、なのか…」

 アナルセックスの常識だと煙草を燻らせながら笑う稲瀬に松原はショックを受けつつも肩を落とし足元を見た。
 お互い簡単に服を着込み、ベッドに腰掛ける姿のまま話す二人は暫くの沈黙を保ったまま、けれど稲瀬が大きく息を吐いて吸殻を潰す音によって破られる。松原は肩をビクリと揺らして、小さく謝罪の言葉を口にした。

「す、まなかった…」
「松原さん…あんた、本当にホモじゃないの?」

 稲瀬の疑うような視線が松原を刺す。

「ち、違う!」
「じゃあ何で俺襲ったんすか」

 それを説明する明確な言葉は松原の中にまだ現れてはいなかった。
 稲瀬は大きな溜息を吐いて、新しい煙草のフィルターを口に挟む。そして火をつけないままボソリと心中を吐き出した。

「…松原さんにバレたのかと思った」
「は?」
「俺が、ずっとあんたのことそういう目で見てたってこと」

 その言葉に松原はあぁ、と納得して目を泳がせながら疑問を口に出す。

「その、稲瀬はゲイ、なのか?」
「え?あぁ、ガチムチ熊専のバリバリのホモっす」
「じゃ、じゃあ、…その、プロレスがすきなのは…」
「プロレスが好きってか、完全レスラーをオカズにする為っすね」

 少し罰が悪そうに呟く彼に、松原は怒りたい衝動を堪えて息を吐いた。結果はどうであれ彼をレイプした自分が責める資格はない。

「あの」
「…なんだ」
「こういう気まずい雰囲気…ってか、腹の探り合い嫌いなんで、言ってもいいですか」

 結局火を付けず仕舞いの煙草は灰皿に置かれた。濡れたフィルターにもうそれ吸えないんじゃないか、と呑気なことを考えながら松原は真剣に自分を見つめる稲瀬の顔と向き合う。

「実は…デビュー戦の時から松原さんのこと好きでした…一目惚れっす。ずっと隠して、松原さんの気持ち踏みにじるようなことして、すんません…でも、もし松原さんが…何で俺を襲おうって気になったのかは知らないけど…松原さんが許してくれるなら、…好きなんです。応えて欲しいんです」
「…っ」

 真っ直ぐな告白に、松原は一瞬息を呑んでから彼を見つめ返し、言葉が見つからぬまま頭を掻いた。

「俺…童貞なんだわ」
「はい………はい?」
「いいから聞けって。…ずっと人生でプロレスが一番だったし、話せる仲間と飲んでる方が楽しかったからすっかり卒業逃しちまって、去年引退してからもう何もかもなくなった気がして、今更女とあーだこーだする気力もねーし、ソープ行っても勃たねーし、自棄になって、男ならって…それで、お前を…その、最初はレイプして童貞卒業しようって」
「別に松原さんにならいくらでもケツ貸しますけどね」
「………ま、まぁなんだ、それで考えたんだけどちょっと理由あって童貞卒業は無理だなーって思って」
「理由って?」
「言えない」
「…」
「そんな目しても絶対言わねぇ」

 稲瀬は不貞腐れたように唇を尖らせて「そういえば絶対チンコ触らせなかったし見せませんでしたよね」と痛い所をついてきた。
 それに松原は言葉を詰まらせて、話題を逸らせないようにと話を続ける。

「で、だ。でも一回もセックスしたことないのって…40過ぎたおっさんがどーなん、って思って、だ」
「あー…ケツ処女喪失ってことですか。………松原さん結構天然ですよね」
「うっせ」

 罰が悪そうに眉根を寄せて松原は悪かった、と頭を下げた。

「えー…っと、つまり、松原さんの中には俺に対して恋愛感情的なもんはないと?」
「あるとは絶対に言えないがないとも言い切れん」
「うわ、何か凄いややこしい答えが返ってきた」
「責任は、…取るつもりだ」

 そう深く吐き出すように重みをこめて言えば、稲瀬は急に跳ね上がるように立ち上がって松原の両肩を掴み、引き寄せる。

「嫌ですよ、そんな付き合い方ってこっちではどうせ『やっぱり女の方がいい』って言われて捨てられるパターンなんすから!」
「…そもそも俺は女の経験がないんだが」
「あー、う、あ、確かにそうですけど………でも、嫌です、どうせなら松原さんに好きになってもらいたいし、恥ずかしそうにおねだりとかされたいっ」
「…最後のはただのお前の願望だな」
「〜〜っとにかく!…嫌です、責任取るみたいな考えで俺に自分の罪悪感押し付けないで欲しいっす」

 そう辛そうに呟く稲瀬に、松原はようやく自分の発言の愚かさに気付いた。
 確かに自分はこの胸の奥に燻る気持ちをどうにかして消化したかったのかもしれない。

「っじゃ、じゃあ、どうすれば…」
「うーん…とりあえず、俺も松原さんを裏切った訳だし、お互い様…ってことで…その、」
「どうする?」
「元の関係に…あー、いや、友達に、なんですけど…俺に対して前向きな考えも持って欲しいという願望も、やっぱりありつつ…」

 そう気まずそうに「我儘ですみません」と謝罪する彼の様子に松原はつい口元を緩めて、項垂れる頭を数度叩いた。

「あー、うん。…実際ヤっちまったから意識すんなって方が難しいし」
「え?」
「まぁ、俺も隠してたとは言えそんなお前と一緒にいるの楽しくて今まで付き合ってきたわけだし」

 顔を上げる稲瀬に松原は笑みを作って、

「また、飲みに行こう」

 そう答えた彼に、数秒後飛びつくように稲瀬が体重を乗せてきた。咄嗟のことで支えきれなかった松原はそのままシーツの中へと共に埋もれてしまう。
 そして抱きつき肩口に顔を押し付けるそこから水の感触と安堵の息が聞こえて、松原は思わず頭を自然と優しく撫でていた。
 結果の顛末は―――自身が想像していたものよりも遥か斜め上になってしまった、と苦笑しながら。

「…ところで松原さん」
「おう」
「チンコ見せてくれなかった理由、教えてください」
「え?」

 けれど松原の斜め上の顛末は、残念ながらまだ末まで至っていなかった。



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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