page - 01
「じー……」
「ど、どうしたの?」
私は友人・結を細胞を観察するように熱い眼差しで見つめる。
「いやぁ……幸せそうだなぁって思って」
「えっ!?」
ほら、すぐに顔に出る。
結ってホントにわかりやすいんだから……。
「ホントにうらやましいなぁ……」
「だったら告白すればいいじゃん……」
ぼそりとつぶやいたつもりだったのだろうけれど、聞こえてます。
そんな勇気があったらとっくにしてるよ……。
「はーあぁ……最近、研究で忙しいからカフェにも行けないよ……」
「無理しないでよ? 絢未って夢中になると食事も忘れるんだから」
「あはは……」
好きなものは好きなんだから仕方ないじゃん……。
その後、結は午前で講義が終わりなので食堂で別れ、私はまだ講義があるので次の講義室へ向かう。
えーと、次は細菌関連だったよね……。
最近は立花さんとはラインでこんな話ばっかりだった、私が湯水の如く滔々と話しつづけ立花さんはそれを相槌を打つようにメッセージを送ってくれる。
こんな細胞の話しかしない研究オタクの話を延々と聞いてくれるなんて……本当にいい人だ。
そう、立花さんはいい人なんだ、好意から来るものではない。
そうわかっているはずなのに、それでも構わない、この関係がちょうどいいと甘えてしまっている……。
「お、新城じゃん!」
「あっ、梶田君。梶田君もまだ講義?」
「うん、そう」
廊下で出会ったのは梶田君であった。
梶田君とは同じ研究室の人、梶田君も少しチャラそうに見えるが、態度はいたってまじめだ。
見た目も性格も同じという共通点のおかげで、研究室の中では一番仲がよかったりする。
「もしかして、同じ細菌の?」
「正解」
「やっぱり〜! ホント、梶田君と私って似てるよね〜!」
「びっくりするぐらいにな」
梶田君は確かにイケメンだけれど……やっぱり立花さんには勝てないよね!
「そういや、どうなの? 行きつけのカフェ。最近、行けてないんじゃね?」
「うん、そうなんだよね〜。はーあぁ、早く立花さんに会いたいなぁ……」
梶田君とは本当になんでも話せて、いわば男友達みたいなもの。
立花さんのこともよく知っている。
「早く行けるといいな」
「うん!」
会いたさが募って、切なくなるよ……。