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さすがに豆はないだろうな……と思っていると、意外とコーヒー豆も機器も揃っていたので驚いた。
「はい、淹れましたよ」
「ありがとう。──嬉しいな、家で結ちゃんのコーヒーを飲めるなんて」
「豆とかもあるなんて……準備万端ですね?」
「言っただろ? 念願だって。いただきます。──う〜ん、美味しいよ。いつもの結ちゃんのコーヒーだ」
「そ、そうですか? 誰が淹れても同じだと思うんですけど……」
「俺にとったら違うの。朝食も作ったからどうぞ」
「ありがとうございます」
スクランブルエッグにパリッとしたウインナーにトーストと、オーソドックスな朝食だ。
「忍田さん、いつもこんな感じなんですか?」
「うん、まあね。ほら、いつもカフェでモーニング食べるし」
「わざわざそのために少なめの朝食なんですか」
「そうだよ。これが俺のルーティンなんだよね」
「へえぇ……」
「そういえば今日はバイトは?」
「今日はないです、確か講義も今日はなくて……」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、俺も今日は休んじゃおうかな」
「えっ?」
「だって今日は結ちゃんといたいし」
「ええ!? ダメですよ、そんなの! 仕事は行かないと!」
「大丈夫大丈夫。今日は営業入ってないし」
「でも……!」
「だってせっかくの記念日なんだもん」
「き、記念日?」
「そう。俺がやっと結ちゃんを手に入れた大事な日」
「忍田、さん……」
またこの人はさらっと恥ずかしいことを言う……なのに、今日はそれがとてもうれしい。
「もう……ずるいです、そんなの……。そんなこと言われたら強く言えないじゃないですか」
「あはは。そうだね、俺ってずるいかも。でも、昨日と今日は本当に俺にとって大切なんだ……。だから、許してね?」
「仕方ないですね……今日は許してあげます」
チュッと軽いキスを交わして見つめ合い……再びキスをすると──忍田さんが唇を強く押しつけてきた。
突然のことに忍田さんを突き放した。
「な、なんですか急に!」
「あ……ごめん……。さっきの結ちゃん、すごい可愛すぎて……」
「えっ……?」
「もう一回しよ」
「ええ!?」
「お願い」
「ぜ、絶対に嫌です!」
「じゃあ挿入れたりしないから」
「絶対に嫌です〜!」
この溺愛っぷりだけでもどうにかならないかなぁ……。