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「ま、あくまで俺の推測だけどね」


 立花さんはははっと軽く笑い飛ばし、開店準備のため外に向かったのだった。
 そして、一人残された私ははちみつがけトーストを一口かじってカフェオレを飲むと、ふぅと一息ついた。


 立花さんのことばかり考えていたけれど、それは気のせいで自分のことしか考えていなかったんだ。
 改めて冷静に考えてみれば……私、忍田さんのことが好き、なのかも……。
 でも、恋愛するのは怖い。
 こんな中途半端な気持ちで、忍田さんのことを好きになっても──。


 ──『そのうちでいいから結ちゃんの抱えてるものも教えてね。俺でよければ力になってあげたい。そしたら、俺もちゃんと話すから』。


 そういえば、そんなことも言ってくれてたっけ……。
 忍田さんは本当に優しい人だ。


 もし、この中途半端な気持ちが過去のものによってだとしたら話したほうがいいのかもしれない、けれども、それは同時に忍田さんの過去も知ることにもなる。
 忍田さんも何かを抱えていて、私はそれを受け止めることができるのか……。


「う〜ん……」


 考えれば考えるほどにわからなくなった。


「おはようございます〜。あ、結ちゃん! おはよう」

「真美さん。おはようございます」

「何食べてんの〜──って、立花さんのトーストじゃん〜。美味しそう!」

「あ、はい。美味しいですよ」

「だよねぇ〜。やっぱ立花さんのトーストは美味しいよね〜。忍田さんがハマるのもわかるよ、私も立花さんのトーストに惹かれてここに入ったし!」

「そうだったんですか」

「うん! ま、今は忍田さん目当てもあるけど〜。でもさぁ、私がどんなに話しかけても忍田さんっていつも結ちゃん見てるんだもん。うらやましいなぁ〜」

「えっ、そうなんですか?」

「うん、ずーっと見てるよ。いやぁ、結ちゃんってば愛されてんなぁ〜」

「あ、ははは……」

「だから、忍田さんはもう目の保養! 見てるだけで十分! あっ、私も着替えてきちゃうねぇ〜、ごゆっくり」

「はい」


 うわぁ、忍田さんって結構、露骨だったんだなぁ〜みんなにバレバレじゃん……。

 それにしても、忍田さんってどれだけ私のことが好きなんだろう……。

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