page - 12

｢ふふ、ホントに仲がいいんですね｣

｢親友みたいなもんだもんな！｣

｢いや、ただの同僚｣

｢いや、ホントひどいって〜｣


　忍田さんたちのおかげでさっきの嫌なことが吹っ飛んでいった気がした。


｢ありがとうございます｣

｢え？｣

｢あ……いえ、とても楽しいです、お二人といて｣

｢それはよかった〜。──あっ、そうだ。結ちゃんもさ、俺の部屋に来ない？　俊介と飲もうって思ってたんだけど｣

｢え……｣

｢いやいや。男二人と飲むのなんて、何の罰ゲームだよ。ごめんね、結ちゃん。変なこと言っちゃって｣

｢ん〜？　何だよ俊介、急に……。あっ！　さてはお前、結ちゃんが酒飲めないって知ってて!?｣

｢はぁ？｣

｢いやいや、絶対そうだろ！　──あっ、それに前言ってた子って結ちゃんのことか!?｣

｢はぁ!?　ちょ待っ……何言って！｣

｢ははぁ〜ん、そういうことかぁ〜｣

｢え？　え？　どういうことですか？｣


　一人でやたらと頷いているので訊ねると、忍田さんが深いため息を漏らしてこの世の終わりだと言わんばかりの表情をしている。



｢この前、俊介に好きな人がいるってチラッと噂で聞いたんだよ。で、質問攻めにしたら観念してさぁ〜！｣

｢いやお前、マジでやめろって……｣

｢めっちゃくちゃ片想いしてんだなぁって思ってたんだけど……なるほどね！　今、すっごい納得した！｣

｢納得できるんですか？｣

｢そりゃあねぇ〜。何となく俊介の好みドストライクな感じすんもん！｣

｢お前のそういうとこ、ホント恥ずかしいよ……｣

｢で？　結ちゃんはどうなの？｣

｢えっ？｣


　忍田さんの落ち込み具合を見て心配しているときに、唐突に声をかけられて素っ頓狂な声を発してしまう。


｢え〜？　聞いてなかった？　だから、結ちゃんは俊介のことどう思ってんの？｣

｢え……えぇぇえええ……｣


　ど、どう思ってるって……。
　うーん……嫌いではないんだけれど、まだその、付き合うとか……は。
　最初は……スマートでかっこいい男性だと思っていたけれど、告白されてからは、忍田さんという人は今まで見えていた忍田さんとは違っていて……。
　うーん……我ながら何を言っているかわからない。