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目を覚ますと、真っ白な世界にふわふわと弾む暖かいものに包まれていた。
首を動かして、ここがどこかと推測を立てる。
白黒でまとめられたシックな、雑多なものが全くない整頓されたその部屋。
明らかに見慣れない景色だ。
「私……?」
「あ、起きた?」
「え? えっ、忍田さん!?」
起き上がると同時に、優しい低い声が私の耳を刺激する。
その声の主は忍田さんで、お風呂から上がったのか、頭の上にタオルを乗せて立っていた。
「えっ、あの……ここって?」
「ここは俺の部屋」
「忍田さんの部屋!?」
「そう。結ちゃんが飲みすぎちゃったから、俺の部屋まで運んだわけ。あの居酒屋は俺の行きつけでね、近所で使いやすかったんだ。だから、結ちゃんに紹介したんだけど……」
「あ、あああっ、あのっ、すみません! 今から帰りますから!」
ベッドから降りて、自分の荷物を探す。
だが、この部屋には置かれていない。
「あれ? 鞄は……?」
「ね、結ちゃん」
「え?」
忍田さんを見ると、乗せていたはずのタオルが忍田さんの足元に落ちている。
そして、こちらをまっすぐに見つめてくるその眼差しに、ドクン……と心臓が悲鳴を上げた。
「俺が合コンを断ってる理由の一つは、結ちゃんにあるんだよ?」
「え……? あの、それってどういう……」
「そっか……。結ちゃんは鈍感だったか。結構、露骨な態度を取ってきたつもりだったんだけど」
忍田さんが徐に近づき……そして、私の唇を奪った。
それは一瞬のことで、私の頭の中は状況についていけていない。
「忍田──」
「好きなんだ、結ちゃん」
「え……えええぇぇええっ!?」
「すごい驚きようだね。可愛い」
ちょっと待って……どういうこと!?
忍田さんが私を?
なんで!?
まだ酔いが覚めていないせいなのか、全く把握できない。
どうして忍田さんが私のことを、いつからそんな露骨な態度を取られていたのか。
全然、分からない……。
「わっ……」
ベッドへ逆戻りされ、さらにはその上に忍田さんが覆い被さってくる。
やがて、再びキスをされ……。
「んん!? ん、っん! んん〜っ!」
まさかのディープキスをされる始末で、もうどうすることもできない。
「はぁっ、ん、んっ……んや、だ……め……っ」
キスなんて経験していない私には、ディープキスなどできるはずもなく、下手な息の仕方をするしかない。
しばらく顔を交差し、深く口づけられ、その場凌ぎの自己流の息の仕方では、限界を超えてしまった……。
「っはぁ、っはぁ……」
ようやく離されたときには酸欠で、早く酸素が欲しいために肩で息をする。