01想いが、弾ける。

「あ、ああ……っ」


 今日も、保健室で彼のことを想うの──。


 この蒼明高校に赴任して、3年。
 何度、この保健室で自分を慰めてきたのか、覚えていない。


 きっかけは、"彼"の新入生代表のスピーチ。


 ──『僕はこの学校を、生徒や先生たちが気持ちよく過ごせるように、生徒会長になります』


 彼はすでに自分が生徒会長になるんだと意気込んでいた。
 その真剣さに胸を打たれた。


 それからというものの、彼のことばかり考えてしまって、いつの間にか教師としてあるまじき感情を彼に抱いていた。


 最初は見ているだけでよかった。
 でも、彼の友達が私に積極的にアピールしてきたことから、彼のことをさらに知って、もっと知りたいと思った。


 そして彼のことを知る度に想いは膨れ、やがて弾けて、放課後になって彼のことを想いながら自分を慰めてきた。


 でも──


『この動画、流されたくないですよね?』


 まさか、想っていた"凌君"自身に脅迫されるとは思ってもいなかった。


 いけないことだって判っていた。
 でも、彼に触れられることが叶うなんて。


 私が想像していた以上に、凌君は強引で。
 それでも構わないって思ったの。


 けれども、凌君はどうしてあんなことしたの?
 ねえ、教えて……。

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