02目覚めのジェラシー
──生徒は帰宅したようだし、大体は施錠もしたと思う。
残るはプールぐらいかな……。
そのプールへ繋がるドアへ近づくと、パシャパシャと水の弾く音が聞こえてくる。
蒼明高校には水泳部はないから、こんな時間にプールを使う生徒はいないはず。
ならば、これは一体……?
注意するために強化ガラス張りの扉を押し開き、プールサイドに片足を踏み入れた瞬間にようやく生徒の声が聞こえてくる。
だが、その声は私から衝撃を与えた。
「ああっ!」
耳を疑った。
それは明らかに喘ぎ声だったから。
でも、衝撃はそれだけに留まらず、さらに追い討ちをかける。
「もっと鳴き狂えよ。それとも、まだ刺激が足んない?」
え……凌君……?
好きな人の声なのだ、聞き間違えるはずがない。
だからこそ、ショックは大きかった。
「やあ! そんなっ、もう許してぇ……」
よく聞けば、この女の子の声は三日月さんだ。
甲高い声でも大体は判る……。
そんな、嘘でしょ?
凌君と三日月さんがこんなところでエッチ……?
信じたくない。
なのに、嫌でも二人の情事の声が聞こえてきて、必死に耳を塞ぐが、三日月さんの声が鼓膜をつんざく。
「次は俺にアソコの穴見して。できるだろ?」
凌君の無茶ぶりとも言える命令に三日月さんは何と返事したのか私には判らないが、凌君のひどい言葉によって三日月さんが声を張り上げる。
「だったらさ、俺の言うことできるだろ?」
凌君……。
君って人はなんて、ずるい人なの……。
だんだん凌君の言葉を聞いていくうちに嫉妬が生まれてくる。
そんなことを言うのは私にだけだと思ってたのにって。
お願いだから、そんなこと、別の女の子に言わないで……。
「いい子だな……そういう子、俺は好きだぞ」
ドクンッ──胸に一際、重苦しい酸素が入ってきたように鈍痛が走った。
原因は明らかに凌君の言った"好き"って言葉だ。
そんな。
もうやめて……お願いだから、それ以上、違う女の子に触らないでよ!