02オレンジ色の水面(みなも)にて
………………
「三日月。脚に力入りすぎだっつの」
「だ、だって……」
プールの水が夕陽に照らされ、全てをオレンジ色に変えていた放課後。
今日は生徒会の仕事がないから、さっそく俺は三日月にまずはばた足の練習をさせている。
今日、授業でも見ていたが、水泳の授業でしばらく泳いでいなかったハンデのせいか、全身に力が込もって泳げそうにない。
「頑張ってんなー、二人とも」
プールサイドから乾いた笑い声の持ち主、カズが現れた。
「ちょっと瀬戸君、笑わないでよ!」
「いやー。美女が頑張ってる姿って、なかなか拝めないじゃん?」
「瀬戸君、案外Sっ気あるんだね……」
「さーてと。俺は部活行くわ。がんばれよー」
アイツは笑いに来ただけかよ。
カズは何食わぬ顔でプールを後にしていった。
「瀬戸君は何しに来たの?」
「さあ──そろそろ、やめよっか」
「え、もう?」
「無理しても大変だし。少しずつ練習してこう──な?」
「う、うん……」
今まで泳いできたわけじゃない。
水泳は陸上で運動するより、個人差はあるけど4〜10倍の運動していることになる。
だから、初心者に過密なスケジュールは組まない方がいい。
「三日月って体育は得意な方だったよな」
「うん、そうだけど?」
「だったら、すぐに泳げるくらいの体力はすぐにつくだろうから、焦るなよ」
「うん、分かった」
今日はここまでにしておき、俺たちは帰る支度を始めた。