09続く時間

 ベッドに倒れ、お互いの荒い息遣いが聞こえるなか、私は凌君に訊きたいことがやまほどあった。


 何で、私なの?

 何で、私に触るの?

 何で、私にひどいことするの?


 でも、凌君の顔を見ると、次第にそんな疑問さえどうでもよくなってしまう。
 教師と生徒──そう、私たちは禁断の関係。
 それでもやっぱり、私は凌君が好きでたまらない。
 好きで、好きで、それでも好きで。
 たとえ、その感情を捨てろと言われても、凌君を想う気持ちは宝物なの──。


 もし許されるなら──ううん、許される範囲で、凌君の体に触れていたい……。


「成瀬君」

「はい?」

「私たちはいけない関係なの……」

「知ってます」

「じゃあ、お願い。ここには具合が悪いとき以外には利用しないで」

「──判りました。でも……先生に逢ってもいいですよね?」

「こんな変なコトしなければ、ね」

「話なら?」

「うん。それはもちろん」

「じゃあ、そうします──俺、教室に戻りますね」

「判った」


 凌君は徐に起き上がって、衣服を整えると、扉に向かう。
 しかし踵を返して、私を見つめてきた。


「看病、ありがとうございました。綾菜先生?」


 意地悪にお礼を告げながらも、いつもの爽やかな笑顔を残して、保健室を後にした。


 突然やってきた、いつもの静寂。
 なのに、そのいつもの空気がやけに侘しく思えて、胸を締め付けられた。


 凌君ならきっと、私が込めたあの言葉の真意に気づいたはず。
 ううん、彼はきっとどこかで私に接触してくるはず。


 そんな、ほんのかすかな期待を胸に抱いていた。

─To be Continued...

|
しおりをはさむ
トップに戻る
28/96
- ナノ -