09続く時間
ベッドに倒れ、お互いの荒い息遣いが聞こえるなか、私は凌君に訊きたいことがやまほどあった。
何で、私なの?
何で、私に触るの?
何で、私にひどいことするの?
でも、凌君の顔を見ると、次第にそんな疑問さえどうでもよくなってしまう。
教師と生徒──そう、私たちは禁断の関係。
それでもやっぱり、私は凌君が好きでたまらない。
好きで、好きで、それでも好きで。
たとえ、その感情を捨てろと言われても、凌君を想う気持ちは宝物なの──。
もし許されるなら──ううん、許される範囲で、凌君の体に触れていたい……。
「成瀬君」
「はい?」
「私たちはいけない関係なの……」
「知ってます」
「じゃあ、お願い。ここには具合が悪いとき以外には利用しないで」
「──判りました。でも……先生に逢ってもいいですよね?」
「こんな変なコトしなければ、ね」
「話なら?」
「うん。それはもちろん」
「じゃあ、そうします──俺、教室に戻りますね」
「判った」
凌君は徐に起き上がって、衣服を整えると、扉に向かう。
しかし踵を返して、私を見つめてきた。
「看病、ありがとうございました。綾菜先生?」
意地悪にお礼を告げながらも、いつもの爽やかな笑顔を残して、保健室を後にした。
突然やってきた、いつもの静寂。
なのに、そのいつもの空気がやけに侘しく思えて、胸を締め付けられた。
凌君ならきっと、私が込めたあの言葉の真意に気づいたはず。
ううん、彼はきっとどこかで私に接触してくるはず。
そんな、ほんのかすかな期待を胸に抱いていた。