ある日曜日の午後のこと



ある晴れた日曜日の午後のことでした。
とても特別な日だったのです。
アリスは綺麗な色のドレスを着て、お化粧もして、きらきら光る宝石のついたアクセサリーをつけました。
そして彼女に会いました。
アリスの憧れの人です。
そして彼にも会いました。
アリスの義理の兄です。

「お誕生日おめでとう、アリス」
「おめでとう」
『ありがとう、お姉様、お義兄様』

そう、今日はアリスのバースデーパーティなのです。
しかしアリスにとって今回のパーティは気の重いものでした。
大好きな姉夫婦に会えるのはとてもとても嬉しかったのですが、姉は義兄の家に嫁いだので、家を継ぐのはアリスか、アリスと結婚する相手になります。
だから19歳になる今日、婚約者を決めることになったのでした。

「アリス、誰かいい人はいた?」
『私は、あまり気乗りしないの』
「好きな人でもいるの?」
『いいえ、そういうわけでは』
「でも、私は心配なのよ。本当なら今の年で結婚している方がいいのに…あなたは今日までいろんな理由をつけて先のばしにして…」
『お姉様、私は、』

「アリス、こっちにいらっしゃい。」

アリスの母の横には父と話す男性の姿がありました。
歳はアリスよりも少し上でしょうか。
アリスは姉夫婦に断ってから両親の元へ行きました。

「ああ、アリス、紹介するよ。彼は…」

聞きたくない、アリスはそう思いました。
こんなに沢山の男性と会って何度も自己紹介をして、面倒なお話をするなんて、もううんざりだと思っていました。
この人は5人目で、あと3人に会わなくてはいけません。
そして8人の中から1人、婚約者を選ぶのです。
アリスは男性が去るとため息をつきました。

「どうかしたの?」
『お母様、私、怖いの。だって今だけいい顔をして、結婚した後で本性を出してきたら、』
「アリス…」
「そうだな、だから式は1年待つ。だからせめて候補位決めておけ」

通例では去年、すでに結婚しているはずでした。
姉も18歳で結婚しました。
なのにアリスは、婚約者選びがもう何年か前から始まっていたにも関わらず、選びませんでした。
だから結婚も出来ませんでした。
そして両親は心配して、今年こそ婚約者を決めさせようと人柄も地位もあらゆることを調べあげて、アリスに見合う人を今日呼び集めました。

けれど今日、アリスはやはり選びませんでした。
だから結局両親が決めたのです。

アリスの婚約者を。

だからアリスは、1年後の今日、つまり20歳の誕生日に正式に婚約することになったのです。


けれど1度も恋をしたことのないアリスは嫌でした。
嫌で嫌で、逃げたしたくなりました。

そしてアリスは、

私は、出会ってしまったのです。

彼に。

彼らに。

私は、非常識が常識となったような、とても不可思議で素敵な世界に、落ちてしまったのです。

それも、大切な大切な、

結婚式の当日に。



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