Act.7 *決意*
『わぁ〜!!!!!』
開いた口が塞がらない。
漫画の中で見た木ノ葉の里が目の前にある。
『すごい、すごい!!!!』
デイダラ「リク落ち着け???うん。」
『ごめん。本物だぁって思ったら嬉しくなっちゃって。』
デイダラ「気持ちは分からなくは無いんだけどな。あんまり、はしゃぐと落ちるぞ???うん。」
『あ、そうだよね。』
今はデイダラの鳥ちゃんの上に居るんだった。
あ〜…
デイダラの十八番の鳥ちゃんに乗ってるってだけでも、テンション上がっちゃうよね!???
暁ファンだったら当たり前の反応だと思う。
『ふふ〜♪あたしって幸せ者。』
デイダラ「うん???」
サソリ「…うるさい。餓鬼のお守りは糞髷だけで充分だ。」
デイダラ「誰が糞髷だ!???うん!???」
サソリ「てめェ以外にそんな変な髪型した奴、いねーだろうが。」
デイダラ「あ"ぁ"!???」
今にもサソリに殴りかかりそうなデイダラ。
やばい…
喧嘩になりそうだ。
『ご、ごめんね!!!あたし静かにするから、喧嘩しないで???』
デイダラ「別にリクは悪くないぞ。うん。」
サソリ「悪いのは糞髷だから気にするな。」
デイダラ「なんでオイラが悪いんだよ!???うん!???」
『喧嘩しないでってば〜。』
サソリ「こんな餓鬼を相手にするつもりは無いから安心しろ。」
デイダラ「う"ん!???誰が餓鬼だぁ!???」
わぁぁぁぁ!!!!
どんどんエスカレートして来てるじゃん!???
ここは話題転換した方が良いよね???
『デ、デイダラ。そういえば、どうやって木ノ葉に入るの???』
デイダラ「ん???正門から堂々と入るぞ。うん。」
あ、機嫌直った。
ふ〜ん、正門からか〜。
……え???
『正門から!???』
デイダラ「そうだぞ。うん。」
『逮捕されちゃったりしないの???』
デイダラ「……???(逮捕???うん???)」
サソリ「変に忍び込んだ方が逆に怪しいだろーが。」
『そんなもんなの???』
デイダラ「このマントさえなきゃ、オイラ達が暁だって事自体分からねーよ。うん。」
ああ。
だから、出掛ける直前に違うマントに着替えさせられたのか。
なるほどね。
サソリ「顔も割れてねーしな。」
『そっかぁ〜。』
顔が割れていないって事はナルト達とまだ接触してないって事だよね???
う〜ん…
あんまり深く考えてなかったけど、今は漫画だとどの辺りなんだろう???
疾風伝辺りかな〜???
そんな呑気な事を考えていて、ふと停止する思考。
…ちょっと、待って。
―ドクン
急に忙しなく動く心臓。
ああ…、
何であたしはこんな重要な事に気が付かなかったんだろう???
―ドクン
―ドクン
暁のメンバーは皆、
―死んじゃうんだ…。
目の前が真っ暗になり、顔からサーッと血の気が引いていくのを感じる。
デイダラ「…リク???」
心配そうに顔を覗き込むデイダラ。
デイダラ「顔真っ青だぞ???うん???」
サソリ「大丈夫か???」
心配をかけちゃダメだ。
あたしはニコリと微笑んだ。
上手に笑えていれば良いんだけど…。
『大丈夫だよ。ちょっと貧血気味になっちゃったみたい。』
サソリ「体調が悪いなら帰るか???」
『大丈夫。あたし、よく貧血になるんだよね。』
デイダラ「本当に大丈夫かい???うん???」
『本当に大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。』
体調を気遣ってくれる2人の気持ちが嬉しい。
あたしが笑顔を向ければ、2人は微かに頬を染める。
デイダラ「い、一応仲間だからな///。うん///。」
サソリ「フン、買い出し中に倒れられたりしたら面倒だからな///。」
素直じゃない2人が可愛くて、思わず笑ってしまった。
『へへ♪』
デイダラ「何笑ってんだ???うん???」
サソリ「気持ちわりーな。」
『何でもないよ〜。』
デイダラ「変な奴。うん。」
漫画の中のキャラとして、大好きだった2人。
でも、今は1人の人間(ヒト)として2人が好きだ。
昨日の今日なのに、2人と居ると何か落ち着くし…、
温かい気持ちになれる。
何でこの世界に来たのか…。
原因も分からない。
ここにいる意味(必要性)も分からない。
でも、意味なんて自分で作れば良い。
漫画を読みながら、いつも感じていた。
暁の皆は本当に悪い人なの???
確かに大量に人を殺めたかもしれない…
けれど、彼等にだって目的があってやった事なのだ。
木ノ葉が敵地の忍を殺めるのと何ら変わりがないと思う。
うちはの件とか、木ノ葉のやり口の方がよっぽど穢くて残虐だ。
漫画の中で暁の皆が一人、また一人と殺されていくのをいつも悲痛な気持ちで見ていた。
でも、今はあたしの目の前に彼等は実在している。
S級犯罪者だろうが何だろうが、あたしは暁の皆が好き。
だから、皆が死なない結末に変えてみせる。
【あたしが力を付けて、皆を守るんだ。】
―決意は固まった。
『ねぇ???』
デイダラ「なんだい???」
『買い出しはあたし1人で行っても良い???』
デイダラ「うん???」
『ダメ…かな???』
デイダラ「別に構わないけど…。うん。」
サソリ「お前1人だと、余計な用が増えそうで心配だがな。」
『女の子だけの方が買いやすい物とかもあって…。』
サソリ「…分かった。」
渋々だが、納得してくれたサソリにほっと胸を撫で下ろす。
本当は方向音痴だし、知らない地で不安だから一緒に来て欲しいのだけれども…。
あたしには調べなきゃいけない事がある。
今、漫画のどの辺りなのか明確に調べる事。
そこから逆算して、どのくらい時間の猶予があるのかを調べる。
調査内容的にも1人の方が良いだろう。
変に疑われて、サソリ達が捕まるのも嫌だし…。
あたし達は正門の近くに降り立った。
デイダラ「じゃあ15時までに買い出しを終えて、ここで待ち合わせな。うん。」
デイダラが腕時計と財布を手渡してくれた。
『うん。ありがとう。』
サソリ「遅刻したら置いていくからな。」
『は、はい。それじゃあ、行って来ます。』
デイダラ「また後でなー。うん。」
デイダラ達に手を振ると、あたしは駆け足で木ノ葉の里へと向かう。
チラリと時計を見ると、11時を回った所だった。
買い出しだけなら充分に時間は足りるだろうけど、あたしには調べなきゃいけない事がある。
急ぐに越した事は無いだろう。
**********
『…買い出しはこれで大丈夫かな???』
下着やら服やら、日常生活に必要な物は購入した。
取り敢えず、近くの公園のトイレで着替えを済ませる。
『ふぅ〜…。』
身体にピタッとフィットする感じ。
やっぱり服を着ると落ち着く。
マント一枚のヒヤヒヤ感とはおさらばだ。
『さてと…。』
時間を確認をすると14時過ぎだった。
思っていたよりも時間を費やしてしまった。
買い出しその物はそんなに時間がかからなかったのだが、店の場所が分からず目的地に到着するまでに大幅に時間を使ってしまった。
地図の一つでも借りておくんだったな。
(あ、でも地図の見方が分からないから一緒だったかな???)
あと1時間で調べ事をしなくちゃ。
でも、ここは敵陣だし迂闊に行動は出来ないよね…。
周りに怪しまれず、情報を掴むにはどうすれば良い???
『う〜ん。………あ。』
あそこなら…。
人に聞きながら、頭に浮かんだ場所を目指す。
『ここを曲がって…、…………あった。』
ここは漫画でも良く見知った所。
白いのれんを潜ると、「いらっしゃい!!!」と元気な声が聞こえた。
鼻を擽るラーメンの香り。
そう、ここは「一楽ラーメン」だ。
あたしは軽く会釈をすると、席に腰をかけた。
「お嬢ちゃん見かけない顔だね???」
『あたし、木ノ葉に観光に来たんです。』
「観光客か〜。注文はどうする???」
『おじさんのオススメでお願いします。』
注文して、ものの5分で美味しそうなラーメンが出された。
「あいよ!!!おまち!!!」
『いただきます。』
スープを一口飲み、麺をすする。
『わぁ〜、美味しい!!!』
「そうだろう!!!」
『はい、とっても。』
ここからが本題…。
『ナルトくんの言った通りですね。』
「ん???嬢ちゃんナルトを知ってるのかい???」
『はい。以前にお会いしたんです。その時にここの話をお聞きしたんです。』
「あいつ元気にしてたか???」
『はい。まだ戻られてないんですか???』
「ああ。あいつが木ノ葉を出て、もう2年になるかな。」
『そうなんですか。』
…2年か。
ナルトは確か3年間修行に出てたはず…。
って事はナルトが戻って来るまでに1年はある訳だ。
「こんな可愛い嬢ちゃんが来てたのに、あいつも残念だったな。」
『あはは。可愛いだなんて、おじさんもお上手ですね。』
当たり障りない会話を交わしながら、ラーメンを完食する。
『ご馳走様でした。』
おじさんに正門までの行き方を聞き、一楽ラーメンを後にした。
約束の時間まで、あと10分。
急がないと遅刻だ。
あたしは全速力で正門までの道のりを走った。
走りながら思うのは暁の皆の事。
あたしのお願いは聞いてもらえるのかな???
いや。
聞いてくれるまで、頼み込んでやる。
あたしの決意は固いんだから。
〜Fin〜
2011.6/8
prev next
|