Act.2 *湖と鳥と…*
『何で〜、何で〜っっ!????』
全く状況が掴めず、リクは涙目であたふたとしていた。
それもそのはず。
自宅でお風呂に入っていたはずなのに、目を覚ましたら見知らぬ場所。
周りを見渡せば人の気配など感じられない夜の森。 梟の鳴く声が聴こえるだけで、不気味なくらい静かだ。
更には裸で湖の中。
そんな状況で落ち着いていられるはずがない。
『おおお、落ち着くのよ、リク!!!!』
リクは大きく深呼吸すると、目を綴じた。
きっと、ココはまだ夢の中なんだよ。
うん。
きっと、そうだ!!!
次に目を開けたら、自宅のお風呂場になる!!!
なるったら、なるっっ!!!
リクは自分に言い聞かせると、目を開けた。
『………。』
そんな事をした所で現状が変わる訳もなく、相変わらずの湖の中だった。
『…駄目だ。それなら!!!』
リクは自分の頬を力一杯につねった。
『いったぁ〜い!!!』
頬に残るヒリヒリとした痛み。
痛みがあるとゆう事は現実…???
『ゆ、夢のくせに痛いなんて、リアル過ぎでしょ。』
現実を受け入れたくない。
口から出たのは現実を否定する言葉だった。
本当にここは何処なんだろう???
何故あたしはここにいるの???
こんな静かな森の中を1人でいると心細くて頭がおかしくなりそうだ。
『はぁ…。』
リクは溜め息を付き、俯いた。
湖の水はとても澄んでいて、底まではっきりと見えた。
腰上まである水面に映るのは、今にも泣き出しそうな情けない顔をした自分と美しい満月だった。
リクは空を見上げた。
『…綺麗。』
大きな満月とキラキラと光る沢山の星。
東京の何処を捜しても、こんなに綺麗に見える所はないんじゃないかな…。
そんな事を考えながら空を見上げていると、遠くの方に大きな鳥が飛んでいるのが見えた。
この距離から見て、あの大きさ。
多分、大人でも3倍くらいの大きさはあるんじゃないかな???
動物園でもあんな大きな鳥見た事がない。
『…あれ???』
徐々に大きくなっていく鳥。
これって、もしかして…
…いや。
もしかしなくても…
『こっちに向かって来てる…よね???』
もしかして、あたしを食べる気!???
こんな訳の分からない所で素っ裸で鳥の餌になるなんて、真っ平ゴメンだわ!!!
『いっやぁぁ!!!!来ないでぇぇぇ!!!』
リクは陸に向かって、湖の中を走った。
だが、思ったよりも速く進めず距離は縮まるばかり…。
あと、1メートル…
50センチ…
30センチ…
鳥が大きな口を開けるのが見えたと同時にあたしは意識を手放した。
**********
『んぅ…。』
リクはうっすらと目を開けた。目に映ったのは白い天井だった。
『あれ???ここは…???』
あたしはベッドから上半身を起こすと辺りを見回した。
小綺麗に整頓された殺風景な部屋。
あたし…
確か鳥に食べられそうになって…。
それで気を失って…
『…で、何で部屋にいるんだろう???』
―ガチャ
「やっと目覚ましたか???うん???」
扉から入って来たのは金髪と赤髪の美少年達だった。
2011.3/8
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