*Doll* | ナノ



Act .1





・・・目についたのは何処か儚げな雰囲気を纏った女。




屋敷は炎に包まれ、辺りには死体となった屋敷の家臣達が床に転がっている。

主を置いて逃げ惑う家臣達を横目に表情を崩すことなく・・・

また、奥の部屋で狂ったように叫ぶ屋敷の主を助けるわけでもなく・・・

ただ、この悲惨な光景を瞬きもせずに見つめる。





ー不思議な女だな。





女を横目に捕らえつつ、オレは任務を遂行すべく奥の部屋へと歩みを進める。




「ヒッ!!!く、来るな!!!」



男はオレの姿を見るや否や床に腰を付き、後退りしながら辺りを見回す。



「おい、誰か居ないのか!!!!」

サソリ「・・・無駄だ。皆、てめェを置いて一目散に逃げて行ったからな。」

「役立たず共が・・・ !!!!」



役立たずだァ???

命を懸けてまで守る主じゃなかっただけだろう。

里の乱れを気にも止めず、好き勝手していれば当然の報いだろう。

そんな事にも気付けない男がこの里を納めていたと思うと滑稽でならない。



サソリ「お前に恨みはねェが死んで貰う。」

「や、やめろ!!!!来るな、化け物!!!!!」



化け物・・・か。

オレは失笑すると、ヒルコの尾で一突きして男の息の根を止めた。




サソリ「・・・呆気ねェな。」



こいつはコレクションにする価値もねェ。

屋敷の外から派手な爆発音が聞こえる。




サソリ「・・・派手にやってんな。」



この屋敷が崩れるのも時間の問題だろう。

部屋を出ると先程のまま、女は床に腰を着き崩れ行く屋敷を涙を流しながら眺めていた。




サソリ「・・・・・・おい。」




普段なら気にも止めずに通り過ぎていただろう。

だが、オレは無意識に女に声を掛けていた。





『・・・。』




女はゆっくりと視線をオレに向けた。

綺麗なエメラルドグリーンの瞳がオレを捉える。



透き通るような白い肌に、

鼻筋の通った整った顔立ち・・・。

漆黒の黒い髪は炎に照らされ、

艶やかな光を放つ。



素直に綺麗な女だと思った。




サソリ「・・・何故、逃げない???」

『・・・あたしに行き場所なんて在りませんから。』




俯きがちに呟いた声は鈴の転がるような澄んだ綺麗な声だった。





サソリ「・・・お前、名は???」

『・・・リクです。』




何故だろうか・・・。

自分でもよく分からないが、

この女が欲しいと・・・

手に入れたいと思った。




サソリ「リク、オレのモノになれ。」

『・・・え???』

サソリ「どうせ死ぬつもりなら、オレのモノになれって言ってるんだ。」

『・・・あたしなんて、何のお役にも立ちませんよ???』

サソリ「身の回りの世話は慣れてんだろ???」

『ええ。』

サソリ「それで十分だ。」



女は暫く考えた後に首を縦に振った。




『では、えっと・・・』

サソリ「サソリだ。」

『サソリ様、宜しくお願い致します。』



女は微かに口角を上げて微笑むと頭を深々と下げた。




サソリ「ああ。」






・・・これが、リクとの最初の出会いだった。







〜next〜



2013.8/18











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