(手を、出してしまった……)


さっきの屋上での出来事を思い返しながら、職員室へ向かう。


(我慢がきかなかった…でもよくおでこで押し止めた、オレ……)


素直に目を閉じた児玉の顔を思い浮かべると、あのときの胸の高鳴りが蘇った。


(睫毛付いてるって……オレ高校のときとやること変わってねーな。でもあれ以上はダメだ、絶対ダメだ)


そう言い聞かせながら、ガラッと職員室の扉を開くと―


佐伯「お帰り、鴻上先生」
大和「……」
佐伯「おっと、何を隠した」
大和「なんでもねーよ、なんでまだ居るんだよ」
佐伯「いや、どうなったかなーと思って」

眼鏡の奥で意味ありげに笑う。

佐伯「頑張った?」
大和「何の話かわかんねぇな」


軽くあしらいながらデスクに付く。
児玉からのプレゼントの包みをササッとカバンにしまおうとすると……


佐伯「あ、それクッキー?」
大和「なんでわかるんだよ! 透視か!?」
佐伯「いいね、ひとつくれない? 協力したお礼として」
大和「イヤだね」
佐伯「くれ! 女子高生の手作りクッキー!」
大和「お前にだけは絶対やらねーよ!」


ガラッ


クニさん「なっつやすみー、オッオー、なっつやすみー♪」
佐伯「あ、クニさん」


クニさんが鼻歌まじりに職員室に入ってくる。


クニさん「なんだ、まだ仕事残ってるのか」
大和「どっかの理事長が遊んでばっかいるからな。しわ寄せがこっちにまわってくんだよ」
クニさん「はは、そりゃ困った理事長だな!」

そう言って呑気に笑っている。
と、まだ片手に持ったままのプレゼントに目線が動いた。

クニさん「ん? それなんだ?」
大和「何でもない」
佐伯「何でもないはずないよね? そんなに大事そうに持ってて」
クニさん「ふ〜ん……うまくいったか。麟太郎にも報告しないとな」
大和「は?」
クニさん「いや、こっちの話」


訳知り顔で微笑んだ後、いつものようにテキトーに締めくくる。


クニさん「まあ、お前たちも夏を楽しめ!」
佐伯「楽しみたいけど、休みがないよ」
大和「ほんとだよ、あーあ、高校生に戻りてぇなー」


(児玉は17歳……オレが同じ歳の頃、何してたかな)


17歳の夏。そんな遠い昔に思いを馳せる。


クニさん「俺から見たら、お前ら高校生のときから何にも変わってないけどな」
佐伯「そうは言っても、流れた年月は大きいよね。…そういえば」


佐伯が何か思いついたように口を開く。


佐伯「クニさん何歳?」
クニさん「俺? 35だけど」
佐伯「つまり、この歳の差だよ、鴻上先生」
大和「…は?」

言っていることの意図がつかめないまま、佐伯に促されクニさんの顔を見る。

クニさん「ん? なんだ?」
大和「……」


(35ってことは、オレと9歳差…ってことは……)


大和「17歳から見たオレ……?」
佐伯「そう、9歳差ってこういうこと」
大和「マジかよ! こんなおっさんなのかよ!!」


クニさん「お前ら……給料下げるぞ」


End!



[ 2/2 ]

[ << prev ]


▼ Back to TOP








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -