Stage4「特別なえこひいき」


楓子「あっ!」
大和「ったく……何回呼び出せば気がすむんだっつーの……」


2階、旧校舎の端。
理事長室の前に、ブツブツと文句をつぶやく鴻上先生の姿があった。


楓子「せ、先生!」
大和「…児玉?」


呼びかけると、先生が驚いて振り返る。
私が駆け寄ると、不思議そうに言った。


大和「まだ残ってたのか? さっき柴咲が門を出て行くの見えたから、園芸部の集まりも終わったんだと思って……」
楓子「まだ! 大事な用が残ってて……」
大和「……」
楓子「あの…! 今日…、えっと、これ……」


まとまらない想いをなんとか言葉にしつつ、カバンからプレゼントの包みを出す。
両手に持ち、先生に差し出そうとしたその時……



ガラッ



教頭先生「だからいつも言ってますよね? 佐伯先生は女子生徒との距離が近すぎるんです!」
佐伯「はい、いつも言われてます」


(えっ!?)


突然、理事長室の隣の教室から、教頭先生と佐伯先生が現れる。


教頭先生「おやっ、鴻上先生、と……」


私たちに気付いた教頭先生の視線が、手の中のプレゼントを捉えた。


楓子「あっ…」
大和「!」
教頭先生「むむ! それは……」


(…マズい! 見つかっちゃった……)


もうおしまいだ、そう目を伏せた瞬間。




佐伯「教頭先生!」

ガバッ

教頭先生「うわあ!」



教頭先生の叫び声に顔を上げる。
なぜか、佐伯先生が、教頭先生を抱え込むように抱きしめていた……。


教頭先生「な、何をするんですか、佐伯先生!」
佐伯「教頭先生にも、この距離の近さが生む、人間関係を円滑する効果というものを実感していただきたいと思いまして!」


(な、何してるの…?)


大和「なんだなんだ……」


鴻上先生も唖然としている。
と、教頭先生を抱えたまま、佐伯先生が無理に首をひねり、私たちに向かってウインクをした。



(あ、もしかして……助けようとしてくれてる!? 今のうちに教頭先生から逃げなきゃ!)


鴻上先生の顔を見上げる。
すると、同じタイミングで先生も私を見た。


楓子「せ、先生…」
大和「児玉、行くぞ!」
楓子「はい!」


グイッと手を取られる。


佐伯「……頑張るんだよ」


誰に向けたか分からない、その佐伯先生の言葉を背中に受け、私たちは2人で走り出した。



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