にたり笑うカボチャに
蝙蝠の置物、黒猫のオブジェ

賑やかな商店街に
そればかりが目に入る。


「ハロウィン、ねぇ…」


ハットを持ち上げ、辺りを見渡しながらマトリクスは口を開いた

どこもかしこも
オレンジと黒ばかり。

それを更に映えるかの様に
仮装した子供たちがお店を行き来していた


「おっ、と!」


それをボーッと見ていたら
ふとボスンッと足に子供が抱き付いてきた


「おいおい、危ないぞボク」

「トリックオアトリート!」

「へ?」


なんだ、とやんわり笑みを溢して子供に目を向ければ、間髪入れずに子供からの『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!』に俺は間抜けな声が漏れた


「ああー…、えーっと…」


キラキラした瞳で、俺からのお菓子を待ち構えている子供

俺はそれに気圧されつつ
仕方なく子供に手を差し出した


「?」


何も置いていない手を見て
子供は首を傾げる。そしてそのまま俺はニッコリ笑い、手のひらをくるりと回した

すると、ポポンッと手のひらから
少し大きな飴玉を3つ出してやる


「わあ…!ありがとうお兄ちゃん!」


それを見た子供はたちまち笑顔に変わって、嬉しそうに声を漏らす。

そうして、俺の元を離れて手を振る子供につい俺も笑みが溢れた


「さーて、と…っ!」


俺も早く達也のとこ戻らなきゃなーっと呟いて、また前を向いて歩き出す

するとまたボスンッボスンッと
足に抱き付いくる子供たちの群れが


え、ちょっと待ってこれって…



「「「「トリックオアトリート!!!!!」」」」



先ほどの子供とのやり取りを見ていたか、他の子供たちもにんまり笑って俺を見上げる

俺は逆に冷や汗垂れた笑いが出る



「勘弁してくれよ…」





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