『達也!ドングリ狩りに行くぞ!』
っとドラゴンに誘われて、

何故かドングリ探し。
いや…、それよりこの時期に
ドングリはない筈だけども…



そういう僕の気持ちとは裏腹、
ドラゴンが俄然やる気で

そそくさと辺り探索しては
「これは食えるな」って木の実を籠に投げ入れている感じ。

ドングリ狩りというより
木の実狩りじゃないか、と
僕はそのドラゴンの様子を見て苦笑い



「ん?」



そんな中、達也はふと足元を見やり、そして思わずその場で足を止めた



「達也?…あ、」



隣にいたドラゴンがその達也の行動を目に追えば、直ぐに何があったのか理解した


ドラゴンは理解した瞬間、夢中で屈む。

そして手を伸ばそうとすると
不意に達也の手とぶつかった。



「「あ」」



思わず二人とも顔を見合せ、
間抜けな声が上がる。



「…、す、すまん…」

「あ…、いや…」



ポカンとしたと同時、お互いの状況を把握すると二人とも素早く手を引く



「ドングリ、あったね…」

「…だな…」



途端二人は背中合わせに
ボソボソと小さな会話。



「ドラゴンが取りなよ」

「いや、達也が見つけたんだ。
達也が取ればいいんじゃないか?」

「…ドングリ食べるの君しかいないでしょ…」



暫しの間そんな些細なやり取りが続き、



「ぷっ…それもそうだな。」



ドラゴンは達也の言葉に小さく吹き出すと、やっと見つけたドングリを拾い上げる。



「ならこれは…大事にとっとくか。」

「食べないの?」

「一つじゃ味気ないだろう?」



そう言って、側で首を傾げている達也を尻目に俺はポケットへドングリを入れる。



…ちょっと距離が縮まったような、

そんな淡い気分にしてくれたこのドングリ。

食えるわけないだろう?





ドングリがくれた恋模様
このドングリはこの先、
一生に宝物になるに違いない。





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