今日はちょっと早起き。勝太くんが言ってたドラゴンさんのお家をちょっと拝見したくて。
学校終わりは塾だし、見に行けるのは朝しかない。確か…、森奥にあるんだっけ
「あ、あった。」
チュンチュンと雀が囀ずる道を通り、道が大きく広がっていくにつれて姿を現したひとつのお家。
「(これが、ドラゴンとプリンプリン達が暮らしてるって家かな…?)」
そう思ってちょっと近付こうとすると、ふと家のドアががチャリ、と開く音が。僕はそれを聞いた瞬間
咄嗟に草の茂みに隠れてしまった
「(って隠れる必要性なかったよね…)」
自分の行動に苦笑いを溢し改めて、ドアの方を見やればそこには判りやすい背の高い彼。ドラゴンの姿
「今日もいい天気だな、」
「(あ…ドラゴン…)」
大きく体を伸ばし、太陽サンサンの青空を見上げてドラゴンはそう言葉を吐く、その様子を遠くから見つめて思わず笑みが溢れた
「(元気でなにより、かな)」
彼の姿を一目見ただけでどうやら僕は安心したみたい。中々会う機会なんてないからなぁ…でも、ちょっと寂しいかも
「よし、」
もう一度遠くにいるドラゴンを見やれば、片手に桶を持っていって何処かに行くようだ。丁度いいし、僕も後にするか。ここからなら近道になるし
「よいしょ…」
ゆっくりゆっくり四つん這いのまま、茂みから離れようとバックするが、ふとぽんっと僕のお尻に何かが当たった
「…何してるんだ?」
「どど、ドラゴン!?」
「何だろう」と振り向いたと同時、上からかかった声の主と目が合って僕は慌てて立ち上がる
「え、向こうに行ったんじゃ…!?」
「視線を感じてたから辺りを見回ってみたんだ。まさか達也だったとはな」
「(ってことは少なからずはじめっからバレてたんだ…!)」
目の前にドラゴンがいることよりも、自分の行動が筒抜けだったことで恥ずかしくて頬っぺたが熱くなる
うわー、恥ずかしい!!!
「そういえば、こう正面から会うのは久しぶりだな。」
「あ、うん!そう、だね…!」
そんな中、ドラゴンからの言葉にハッと我に返り、向き直れば、予想外にも柔らかい笑みを溢していて
「達也」
もう一回、ドラゴンの声。今度は僕の名を呼び、スッと手が僕の方へ伸びてゆく。柔らかい笑みのまま
僕だけを見つめる彼
「…ん、」
ふわりと頬を撫でられて、目を細めると、もう彼との距離はほんとちょっと。
久しぶりだからかな、ドラゴンの動作がスローモーション見えて、まるで時が止まったような…
ん?時?……あ!!!
「ドラゴンごめん!!」
「むごっ!?」
「僕これから学校なんだ!!」
距離があと一歩で無くなる手前。自分が学校前に来たことを思い出して、達也は一気にドラゴンの顔を引き剥がす
「本当にごめん!!またね!!!」
達也は謝罪を述べながら、バタバタと言わんばかりにドラゴンをその場に置いて走り去ってしまい、ドラゴンは小さくなっていく達也の背を呆然と見つめるしかなく……
「………。」
その姿を見えなくなると、ドラゴンは思わず頭を掻いてため息を漏らす
「久しぶりに会って生殺しとはな…」
その後、勝太に「お前、なんで怒ってんの?」と聞かれたのは言うまでもない。
お気の毒
次に来るのはいつなんだ……
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