僕の彼氏は人間…ではなく、まさかのクリーチャーでした。

普段は人間の姿をしてるし、然程気にはしなかったけど、その代わりに困っていることが一つだけある。

「…達也、」

「ちょっ…ちょっと待って!」

ふと、彼に呼ばれて何気なく振り向けば、至近距離にあるドラゴンの顔に僕はギョッと目を丸くした。そのままドラゴンは近付いてきて、まさか!っと思って声を上げると、彼は不服そうに離れる。

「…なんだ?」

「「なんだ」じゃないよ、今キスしようとしたよね?」

「?、ああ」

僕の問い掛けを不思議そうに首を傾げてそう答えた彼に、思わずため息が漏れた

因みに僕たちがいる場所は街のど真ん中だ。
時間帯的には学生たちが多くて…そんな中で男同士がキスしてたら注目の的になってしまう。

「ドラゴン、こういう場所ではそういうのしちゃ駄目だよ」

「何故だ?」

「何故って…」

だけど彼は姿は人でも本来は全く違う。それもあってか人間の考えとかがちょっと抜けているんだ。

「好きな人……達也と一緒にいるのに、口付けを交わしてはいけないのか?」

「っ、いけない…訳じゃないけど…」

もう、真っ直ぐ僕を見つめてそんなこと言わないでよ…只でさえカッコイイのに!

「僕はこういう場所じゃなくて、二人っきりの時に口付けを交わしたい…なって…」

「……」

その視線にドキドキしてしまってドラゴンの顔が見れないまま、小さくそう答えると

そこからドラゴンの声が聞こえなくなった

「ドラゴ…っ」

もしかして気を悪くしちゃったのかな

そう不安になって顔を上げれば
不意に唇に柔らかい感触

「な、ななな!ドラゴン!?」

「すまない、あまりにも可愛くてだな…」

一瞬だけだったけど直ぐに何が起きたのか理解してドラゴンに声荒げれば、当の本人もちょっと申し訳ない顔立ちでそのまま僕の耳元に顔を寄せた。


『今度はちゃんと二人っきりの時にする。激しいやつを、な?』

「ーっ!!?」

色っぽくそう呟かれるだけで僕の顔は沸騰状態。
なのに彼ときたらどこか楽しそうで

「っもう口付け禁止!」

「なっ!?ワッツ!?」

それに不覚にもときめいてしまった自分が悔しくて、仕返しにそう言い放ち歩き出せば

「待つんだ達也!ストップ!
もうしないから考え直してくれ!」

「ふふ…、どうしようかなー」

今度は焦るドラゴンを見て
僕も楽しませてもらうことにした。


人目は大事
次の二人きりの時が楽しみになったのは秘密





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