小説 | ナノ




‖悴む手

「はあぁ」
白い息が漏れる

上を見上げると雪が舞ってくる

「…寒い」

悴む手
凍りつく痛み
髪さえも凍てりつく
−白い世界

「小倶那…」

彼は
今何しているのか

幼い頃に約束した思い出さえ
狂わしく想う

年も16になったばかり
背丈も
髪も
それは
小倶那を待ち続けた分だけの長い歳月

どれほど待っているのか
もう、
目に見えて分かる

泣きたい程の
思い出

「…彼も
わたしを抜くぐらいの大きさになっているのかしら」

わたしは
わたしで居る限り
待ち続けているから

雪が解けて
春が来たら
彼は
ここに足を運ぶと信じているから…



ごおおと
燃え盛る炎

−どうしてこんなことになってしまったのだろう

(必ず戻ってくるから)

あの笑顔が
脳裏に浮かぶ

「…母様
   父様」

春が、来たら
雪が解けたら
全てが叶うものだと想っていた

「遠子…」

込み上げて来る
怒り、
憎しみ

全てを燃やし尽くしたのは
あの子だと


「遠、子」

知っているから


「行こう、象子」

愛しく想う気持ちを置き去りに
わたしは短剣を握り締める

握り締めた刃が悴む
あの日
白い息を吐いたように
小さな寒さが舞う中で…

+遠子+




[*前] [次#]






Main



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -