小説 | ナノ




‖笹

「や〜いみなし児」
「お前此処の人間じゃないだろ?」
「本当の親居ないくせにでしゃばるな」

よく村の人はあたしに向かって言う
その理由は簡単
あたしが
此処の人間じゃないから…



だから



ずっと涙を我慢した
ずっと痛み続ける心を押し殺した…



だって



一人になるのは嫌だから…


母さんは微笑みながら言う
「大丈夫,大丈夫よ狭也…例えお前が此処の子どもじゃなくても
狭也は私の大切な大切な娘よ」



心温まる母さんの声
岩の様にごつごつした手で頭を撫でてくれる父さんの手

生きていける

あたしは独りぼっちじゃない…
大丈夫だと
自分に言い聞かせた



でも
何故だろうか…
それでも尚,
心の何処かで



「此処に
あたしの居場所は無い」

想っている…



ふと
頭をあげる



とても綺麗な夕焼けだ
竹の笹が揺れる…
さやさや
さやさや…と



雲が隠れる太陽に多い被さる



急に
目頭が熱くなった



あたしの居場所は何処なのだろうと…
あたしは死ぬまで一人なのかと…



そう感じた



あたしを…
狭也を必要としてくれる人間が現れ優しく迎え入れてくれる人が何処かにいると
そう心の奥底で願っていた



りん



手のひらの痣が
心の音を一瞬だけ奏でた


何故か
分からないけれど
そんな気がした



そっと
その痣を見つめ
もう一度夕日を見た



そして
全てを振り切るように
流れ落ちる涙を
勢いよく
拭き取る



明日を待とう
明日になったら答えが出る筈だから…



それまで
涙は流さない



…さあ帰ろう



あたしは足早に
母さんと父さんが待つ家へ向かった



†狭也†



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