和解

あれから1ヶ月が経過した。
僕は去年と同じく、テニスで忙しい日々を送っていた。
華代とは全く話さなくなった。
テニスコートの傍の木陰でたまに華代を見つけたけど、話しかけなかった。
避けている訳じゃない。
この1ヶ月よく考えたんだ。
僕では、華代を救えない。
僕がいなくても、華代は今まで通りの生活を送れる。
僕はこんなにも君を想っていて、君を必要としているのに、君は違う。
そう思う度に、心は棘が刺さったように痛んだ。
君の事を少しでも忘れる為にも、今までになくテニスに没頭した。

そして、久し振りのオフの日がやってきた。
僕は自分の部屋のベッドに寝転んで天井を見つめながら、華代の事を考えていた。
考えないようにしようとしても、頭が勝手に考えてしまう。
もう考えない事を諦めてしまおうか。


―――コンコン…


「!」

突然、部屋がノックされた。
ベッドから降り、ドアを開けた。
そこには、愛がいた。

「お兄ちゃん。」

「愛?」

驚いた。
この1ヶ月、話さなくなったのは華代だけじゃない。
妹の愛もそうだった。
女子テニス界のトップを走る愛は、試合で海外遠征が多いし、余計に話す機会がなかった。
僕を避け続けていた愛が自分から訪ねて来るなんて、如何したんだろう?
愛は僕の目を見ずに、視線を泳がせていた。

「あの…ちょっといい?」

「うん、入りなよ。」

僕は妹を部屋に招き入れた。
愛は何か相談があれば、こうやって僕の部屋に来ていた。
それがとても懐かしく感じた。

「座って。」

「ありがとう。」

僕らは部屋にある小さな丸型のデスクの傍に敷いてある座布団に座った。
お互いにデスク越しに向かい合った。





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