告白-4

『………え?』

君は目を見開いて、頬を真っ赤に染めた。
僕はそんな君の身体をやっと解放したかと思うと、背を向けてサッとラケットバッグを拾った。

「それじゃあ!」

自分でも驚く速さで、その場から走り去った。
がむしゃらに走りながら、僕の顔も真っ赤だった。
思わず告白してしまった――
テニスコートまでダッシュし、腕を組みながら朝練を見物している手塚の元へ駆け寄った。
突然目の前に現れた僕に手塚は相当驚いたのか、珍しく大きく目を見開いた。
制服のままの僕は、呼吸を整えるのに必死だ。
更にはさっきの余韻で顔に赤みが残っていた。

「不二、5分遅刻だ。」

手塚は冷徹に言い放った。
また遅刻してしまった。
その反省と先程の告白で、僕の頭の中は完全に混乱していた。

「手塚、グラウンド100周だよね。

今度は僕が走るよ。」

息切れしながら話す僕に、元のポーカーフェイスに戻った手塚は表情一つ変えなくなった。
何を考えているのか読み取れない。
呆れているのか、怒っているのか。
もしかしたら両方かもしれない。
この無表情から愛は感情を読み取るのだから、凄いと思う。

「待て、手塚。」

誰かの声がした。
僕は後ろを振り向いた。

「乾?」

まさか乾が代わりに?
いいや、そんな筈はない。
まだ頭が混乱しているみたいだ。
乾は僕の前にズイッと巨大なジョッキを突き付けた。
その瞬間、僕は顔から血の気が引くのが分かった。

「乾汁ハイパーDXの新作。

これを刑にして貰おう。」

乾は手塚を見ると、同意を求めて眼鏡をキラリと逆光させた。
手塚は冷や汗を掻きながら、無言で一度だけ頷いた。
僕の絶叫がコート中に響いたのは、その直後だった。


ずっと自分の中に閉じ込めていた想いを、君に伝えてしまった。
本当は愛に指摘される前から分かっていたんだ。
気付かない振りをしていただけだった。
これが、恋なんだね。



2008.9.25




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