星空

途中参加した部活は終了した。
でも、英二はまだ走っている筈だ。
幾らテニスで鍛えているとはいえ、グラウンド100周には相当な時間を要する。
僕はジャージのまま、グラウンドへ走った。
当然だけど、英二はまだ走っていた。

「あと10周!!」

そう言って自分に喝を入れながら走っている。
そんな英二を見て、申し訳なさで一杯になった。
英二は僕が悩んでいるのを見抜いて、僕を庇って走ってくれているんだ。

ごめん。
ごめんね、英二――

英二は請け負ったことは最後まで遣り遂げるタイプだ。
邪魔は出来ない。
親友だからこそ、邪魔はしない。
グラウンドの傍にある開けた場所の木の下で、立ち尽くすように英二を待った。

「不二先輩!」

「!」

英二が走るのをただ見守っていると、桃が話しかけてきた。
既に着替え終わった桃は制服姿だった。
僕に寄ってきて、屈託ない笑顔を向けた。
桃は華代ちゃんのお兄さんだったね。
華代ちゃんから僕のことを聞いているのかな。
もしあの事を聞いていたらと思うと、桃と話す事に少し抵抗が出た。

「俺も一緒に待ちますよ。」

桃は重たいテニスバックをドサッと下ろし、芝生にごろんと寝ころんだ。
僕は口が開かなかった。
もし華代ちゃんから全部聞いているとすれば、桃にとって僕は妹をいじめる悪者≠ネんだ。

「不二先輩、俺…。」

僕は寝転んでいる桃を見た。
非難されるのを覚悟した。
でも、桃の口から出たのは意外な言葉だった。

「俺も、華代に手術して欲しいと思ってるんですよ。」

「……え?」

僕は目を丸くした。
俺も≠ニいう言葉は、僕が華代ちゃんに手術をして欲しいと言った事を知っているんだと暗に示していた。
やっぱり華代ちゃんから僕の事を聞いたんだね。
それに、桃も華代ちゃんに手術して欲しいと思っているというのは本当なんだろうか。
僕は桃の次の言葉を待った。
桃は夕焼け空を眺めていた。

「正直に言うと、華代から不二先輩と何があったか聞いたんです。

俺は先輩の事、本当に尊敬しました。」

「僕を?」

尊敬?
思いも寄らない言葉だった。





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