恋心

「それは恋≠ヒ。」

「え?」

恋?
この僕が?

部活から帰ってきて、愛に言われた台詞。
唖然としたのも束の間、僕は何時も通りにこにこした。

「あのね、愛。

もう一度言って貰えるかな?」

「何回でも言うよ。

だからそれは恋よ。」

「………。」

「あのー、お兄ちゃん…?」

目を丸くした僕は、黙り込んだ。
愛は可笑しなものでも見るかのような目で僕を見ている。
全くもって失礼だ。

「お兄ちゃん、生きてる?」

「生きてるよ。」

テニスばかりしてきた僕が、恋?
愛は続けて言った。

「お兄ちゃんはもう華代を好きになりかけてるのよ。」

「!」

「可愛いと思うんでしょ?

それに華代が越前君と一緒にいるのを見たらムカついたんでしょ?

それは嫉妬っていうの。」

「……。」

「絶対に恋ね。

もしかして一目惚れ?」

「……。」

僕は頭を整理しようと、家庭的な愛が入れてくれた紅茶を啜った。
確かに華代ちゃんを可愛いと思う。
越前に腹が立ったのも事実だ。
でも越前のことは中学の頃から生意気だと思っていたから、その余韻かもしれない。

「お兄ちゃんもついに青春なのね。

しかもお相手があたしの親友の華代だなんて。」

愛は嬉しそうだ。
愛の親友だっていうのに、僕は華代ちゃんを知らなかった。
何だか悔しい。
僕も愛をからかってやりたいけど、そんな事をしたら僕が手塚に何をされるか分からないからね。





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