恋心-2
翌日、今日は土曜日。
部活は朝8時から。
全国レベルのテニス部だから、土日でも練習を欠かさない。
朝に弱い僕は遅刻しがちだから、普段から一人でのんびりと学校へ行く。
愛は毎朝手塚と通学するから、僕とは一緒に行かないんだ。
僕は家を出て、マイペースに学校へ向かった。
学校の正門を潜ったのは7時半。
ちょっと家を出るのが早かったかな?
更衣室へ向っていると、何かがほんの僅かに聴こえた。
立ち止まって耳を澄ませてみる。
弦楽器の音みたいだ。
この音は、バイオリン?
誰が弾いているんだろう。
音楽に詳しくない僕でも分かるくらいに、とても綺麗な音色だ。
興味が湧いて音の方へ歩みを進めると、それは体育館裏付近から聴こえてくる事が分かった。
其処まで行くと、音を奏でている人物の姿を見つけた。
華代ちゃん――?
間違いなかった。
あの清楚な雰囲気と、愛らしい顔付き。
邪魔になるのは悪いから、気付かれないようにそっと近付いた。
何だか泥棒みたいだ。
でも君と僕の距離があと5mという時、君は手の動きを止めた。
それと同時に、あの綺麗な音色も止んでしまった。
『……誰?』
「ごめん、邪魔したね。」
ばれてしまったや。
もう少し聴いていたかったな。
僕は華代ちゃんの傍まで歩いていった。
『不二先輩?』
「そうだよ。」
華代ちゃんのバイオリンケースが立て掛けてある木に、僕は凭れた。
華代ちゃんは首を傾げた。
そんな小さな仕草さえも可愛いらしいと思ってしまった。
―――それは恋≠ヒ。
ふと愛の言葉が頭に浮かんだ。
目の前に居る華代ちゃんを見つめた。
僕が、この子に?
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