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アフロディーテに鎌をかけてしまった。
俺の方が動物の扱いが上手い…だなんて。
しかも、アフロディーテを一瞬だけ抱き締めてしまった。
華奢で細身なのに柔らかかった。
アッシュブロンドの髪に頬が触れた時、艶やかで気持ち良かった。
妖精の鱗粉が見えた気がした。
そして、いい匂いがした。
「俺は変態か…!」
独り言を発しながら競歩並みに早歩きをして、グリフィンドールの談話室に戻った。
テーブルではフレッドとロンが魔法使いのチェスをして遊んでいた。
「おお、相棒。
デートは如何だった?」
「デートじゃない!」
「デートだろうさ」
ハリーとハーマイオニーからの好奇の目を振り切り、螺旋階段を躓きそうになりながら駆け上がった。
寝室のベッドにぼふっとダイブして、髪をくしゃくしゃに掻きむしった。
そうだ、此処にあの猫がいたんだ。
一緒に寝たんだ。
「キスくらいしたのかよ」
「…?!」
フレッドの声がして、慌てて上体を起こした。
ニヤニヤしているフレッドの隣には、興味津々のロンとハリーの姿もある。
俺はベッドの上に立ち上がり、がむしゃらに主張した。
「キスなんて出来る訳ないだろ!」
「手は繋いだ?」
「つ、繋いだというか…引っ張った…」
無言でアフロディーテの手を引いて、図書館に送り届けた。
ぎこちない態度を取ってしまった。
俺の方が三つ年上なのに、子供っぽかった。
「アフロディーテは多分…俺の事を兄貴みたいに思ってる」
「じゃあ兄貴からボーイフレンドに昇格しないとな」
アフロディーテにとって、俺は恋愛対象に入っているだろうか。
ジョージは私のお兄ちゃんみたい、だなんて言われた日には、俺の人生早くも崖っぷちだろうな。
フレッドは簡単に言ってのけた。
「好きなんだろ?」
「…っ、そうだよ悪いか!」
心の中で密かに認めていた気持ち。
それをフレッドの前で口に出したのは、これが初めてだ。
ロンとハリーにも聞かれているけど、俺は二人を構っていられない。
フレッドは満足そうに笑った。
「その調子だ。
応援してるぜ、相棒」
「僕も弟として、兄貴の恋を応援するよ!」
「僕も友達として!」
三人が俺の恋路を楽しんでいる。
如何なるんだ、俺。
自分の行く末に一抹の不安を覚えた。
2019.9.30
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